こんにちは。ANGEL VIBESです。
フォントを作るには下絵やアイデアスケッチは必要です。中には、頭の中に明確なイメージを描くことができて、下絵ナシでデザイン作業を始めてしまうベテランの方、下絵ナシの方が作業がしやすいという方もおられます。
とはいえ、慣れないうちは無理をしない方が良いでしょう。とりあえず、下絵を作成しスキャニング→Adobe Illustratorでトレースをしていく手法で、デザインするのがベターだと思います。
このサイトでは、Adobe IllustratorでトレースしたベクターデータをAI形式で保存し、フォント作成ソフトに取り込んで(それはGlyphsでもFontographerでも)、フォントデータを作る方法を説明してきました。デザインを決めて下絵を作成する方法も説明しましたが、下絵の様式は一つではありません。今回は、ちょっと悩みどころかもしれない、フォントの下絵についてのお話です。

 

フォントのデザインイメージと下絵

フォントの下絵の作り方は、「フォントの作り方(3)」「フォントの作り方(15)」で説明しました。
しかし、もしかすると、下絵を作成する段階で戸惑いが生じてしまってる方もおられるかもしれませんね。どのような手法で下絵を作るのかというのは悩みどころではあります。私の場合ですが、下描きした下絵とデザインしたいイメージとに乖離がある感じがして、どうにもしっくり来ない時があり、ちょっと悩んだことがあります。

 

フォントのイメージの様式に合わせた下描きの手法

いろいろ考え試行錯誤しましたが、フォントのイメージの方向性に合わせて下描きの手法を変えた方が良いようです。私の場合ではありますが、その方がイメージとに乖離が少なくなりました。
フォントの元になる文字を作成し、一式の様式となるタイプフェイス(書体)にするためには、文字の共通パーツとなるエレメントを組み合わせていくことになります。スタンダードなフォントの多くは、そのようなタイプフェイスによるデザインです。
一方で、エレメントの組み合わせに頼らない、手書き感を活かした「書き文字」というフォントのジャンルもあります。現在では「書き文字」ばかりを集めたフォントの書籍があったりするぐらいで、こちらも現在流通するフォントとしてはかなり種類があると言えそうです。上のエレメントを組み合わせてデザインするタイプフェイスが緻密であれば、こちらはストロークによる「味」を生かしていて直感的であると言えるでしょう。なお、「書き文字」についての歴史は古く古代に遡ることができますが、そのお話は、またの機会にしますね。

現在流通しているフォントのイメージの方向性を大別すると、
1. エレメントの組み合わせでデザインされた「緻密タイプ」
2. 手書き感を活かした書き文字等の「直感的タイプ」
この2つのタイプがあります。これら2つの様式に合わせ、下描きの手法を変えた方がイメージ通りになる場合もあるようです。

 

「緻密タイプ」は下描き用紙を使う

以前に紹介してますが、「緻密タイプ」は、碁盤の目がある下描き用紙に鉛筆等で描いて下絵を作成→それをスキャンしてトレースする、この手法でだいたいはカバーできるかと思います。
ちなみに、その際に用いる下描き用紙はこちら。DLして自由にお使いいただけます(なお、この下描き用紙をそのまま販売することは禁止します。念のため。)。

下描き用紙はこんな方眼紙です。

こんな感じで下描きをしていました。

 

「直感的タイプ」は下描き用紙を使わない

手書き感を生かした「直感的タイプ」のフォントですが、碁盤の目がある下描き用紙に鉛筆等で下描きをしてしまうと、どうにも整いすぎるというか、手書きの勢いや「味」が失われる場合があります。そんな場合は、下描き用紙を使う必要ありません。もっとラフに描くなど、落描き的に好きな紙に描いた文字を、そのままスキャンしてAdobe IllustratorのAIドキュメントにレイアウトしてトレースしていただいた方が、描いた線が生き生きしたタイプフェイスに仕上がります。

こちらは、ネタ帳に描いたラフ画をそのまま下絵にしています(私がデザインしたフォント「マカロ」の下絵です)。



こちらは、画用紙に描いたペン画を下絵にしています(私がデザインしたフォント「ほおずき」の下絵です)。

 

私の場合ですが…

私の場合、という前提はありますが、下描きの手法を変えることでイメージしたフォントにより近づけることができる、ということは言えそうです。
もし、下描きのことで悩んでる方がおられましたら、一度試してみても損はないと思いますよ!

 

まとめ

  • フォントのデザインの様式に合わせて下描きの手法を変えるとイメージに近くなる(個人差アリとは思います)
  • エレメントの組み合わせでデザインする「緻密タイプ」は下描き用紙を使う
  • 書き文字等の手書き感を活かした「直感的タイプ」は下描き用紙を使わない

では、また!

こんにちは。ANGEL VIBESです。
グラフィックデザインにおいて、「字詰め」ができているものとそうでないものの見え方は、ずいぶん異なります。「字詰め」とは何かーーーこれは「文字詰め」とも言いますがーーーグラフィックの文字部分の文字と文字の間のアキを調整することを指します。GlyphsやFontographer等のフォント作成ソフトを使用したフォントデザインでも、カーニングやスペーシングの作業に関わってきます。「字詰め」は、グラフィックデザイン全般における重要な要素なので、基本はおさえておきましょう。

 

「字詰め」はデザインの重要要素

上に述べたとおりですが、文字と文字の間のアキを調整することを「字詰め」と言います。文字と文字の間のアキを調整し、バランス良く見えるようにするということです。どこかの部分だけ、詰まって見えたり、逆に間が空いて見えたりしないように文字を移動して調整します。
「字詰め」はていねいに「文字詰め」と言ったりもします。私の周りの同業の人々では「字詰め」と言っている方が多いような気がします。
「字詰め」は、グラフィックデザイン全般において重要な要素です。なぜなら、多くのグラフィックデザインの要素には文字が含まれるからです。文字に関わるデザインは、フォントやロゴのみならず、パッケージの商品名部分、エディトリアルではタイトルや見出しそして本文部分と、多岐に渡って見出すことができます。
このように、グラフィックデザインのあらゆる部分に文字が関わっているわけですが、「字詰め」をしっかり行うことでデザインがどんどん洗練されたものになります。

 

文字と文字のアキのバランスは、どのように調整する?

「文字と文字の間のアキが均等にバランス良く見えるよう、調整をする」という一言ですが、実はこの作業は奥が深いです。文字と文字の間のアキについて調度良く見えるバランスというのは、各個人によって異なります。また、デザイナーによっても好みが分かれる部分のようにも見受けられます。ヤング層はキツキツの「字詰め」を好む一方で、中高年齢層は詰めが緩いスカスカした「字詰め」を好む、という説もリアリティを持っています。「字詰め」のキツい・緩いには絶対的な解はありません。とはいえ、キツい・緩い、どちらの方向性が好みであっても、バランスの良い「字詰め」には基本的には共通項があります。まずは、そういった部分を知っておきましょう。そうしておけば、デザインの現場ではそれほど迷うことはないと思いますよ。

 

文字を○△□としてとらえる

文字を文字と思うからこそ戸惑ってしまうのかもしれませ。文字も要するに図形です。図形と図形の間のアキが、全体的な配列から見て均等になっていればバランス良く見えます。
文字をぼ〜っと見て見ましょう。ものの形は単純化すると○(丸)、△(三角)、□(四角)のどれかに還元されます。これらを調整して並べてアキに偏りが出ないようにすれば良いわけです。アキをキツくするにしろ緩くするにしろ、偏りがなければ全体として均等なアキに見えます。とにかくアキに偏りが出ないようにしましょう。

文字を単純化してこんな感じで調整します

 

△の周りはアキが出やすい

単純化すると三角になる文字の周りはアキが出やすいのでチェックポイントです。具体的には、「A」や「V」、「T」などが該当します。ロゴでも本文でも、他の文字に比べて「A」や「V」の周りのアキが目につく時があると思います。「気になるなあ」と思う時はアキを詰めてしまいましょう。全体に馴染み、気にならなくなればOKです。

 

長方形の周りもアキが出やすい

単純化すると縦長の四角形=長方形になる文字の周りもアキが出やすいのでチェックポイントです。具体的には、横組みのひらがな「り」などが該当します。こちらもアキが気になる場合は、詰めてバランスをとりましょう。
ただし、横組みの数字の「1」や「I」は、詰めすぎると他の文字に同化して見えるので注意が必要です。同化してしまうことにより、可読性が失われてしまうことにもなりかねません。周りの文字の詰まり具合に比べ、ちょっと空き気味でも大丈夫です。

 

まとめ

  • 文字と文字の間のアキを調整することを「字詰め」と言う
  • 文字を○△□としてとらえると「字詰め」が行いやすい
  • △や長方形の周りはアキが出やすい

では、また!

こんにちは。ANGEL VIBES です。フォントデザインの基本がギュッとつまったツールとして、私はGlyphs Miniを推します。そんなお話は既にしていますね。Glyphs Miniは、他のソフトに共通する機能を備えているので、これからフォントデザインをはじめようという方にはオススメですよと、お伝えして来ました。何より、フォント作成ソフトとしては安価ですしね。そうした点からもオススメというわけです。
でも、そろそろGlyphsを使ってみたいという方もいらっしゃるでしょう。今日はそういった方に向けたお話です。

 

Glyphs Miniとは?

少しおさらいしておきますね。Glyphs Miniとは、一言で言うと、Glyphsの廉価版のフォント作成ソフトです。Glyphsの機能を簡略化した製品ではありますが、AdobeIllustratorで作成したAIデータを取り入れてフォントデータを作成することができる仕様は共通しています。ちなみにFontographerも、この仕様は共通です。
Glyphs MiniはGlyphsの廉価版ながら、1バイトのローマ字フォントを作成するには充分な機能を備えています。私の経験的には、アイコンやイラストフォントなら、機能が少ないGlyphs Miniの方がかえって使いやすいという印象です。でも、機能が少ない分、GlyphsにできてGlyphs Miniにできないことがあったりします。なので、状況に合わせて、Glyphsを優先して使用することもあります。

 

GlyphsとGlyphs Miniの違い

上に述べたように、Glyphs Miniの方がGlyphsよりも機能が少ないです。なので、仕様が違う点があります。グリフを追加するツール部分と「フォント情報」の部分は、大きな仕様の違いがあるので見てみましょう。

 
[グリフを追加するツール部分]

Glyphsの「左メニュー」→「文字体系」→「和文」の部分

 

Glyphs Miniの「メニューバー」→「ウィンドウ」→「グリフ情報」の部分

 
見比べて解るように、左メニューが見た目にも違いますね。和文のグリフの追加は、Glyphs Miniでは、「メニューバー」→「ウィンドウ」→「グリフ情報」から選択して行う仕様ですが、Glyphsでは「左メニュー」→「文字体系」→「和文」から、追加することも可能です。漢字については、「常用漢字」「JIS第1水準」「JIS第2水準」と区分けがされていて(三角の所をクリックして開くと項目が出て来ます)、そこからまとめてグリフを追加することができます。「かな」についても同じように区分けがされているので、そこからまとめて追加が可能です。その点、Glyphs Miniにはそういった和文の区分けはなく、「グリフ情報」で、unicode順に並んだグリフから選択し追加しなければなりません。
「常用漢字」のグリフを追加したい時に作業をしやすいのは、グループ分けしているGlyphsの方でしょう。和文のグリフの追加は、Glyphsの方がスムースそうですね。

 
[「メニューバー」→「ファイル」→「フォント情報」の部分]

Glyphsの「メニューバー」→「ファイル」→「フォント情報」の部分

 

Glyphs Miniの「メニューバー」→「ファイル」→「フォント情報」の部分

 
見た目でもわかりますが、「フォント情報」は、Glyphsに比べGlyphs Miniの方が記入事項が少ないですね。Glyphs Miniが、「info」に記入事項があるだけなのに対し、
Glyphsは「フォント」、「マスター」、「インスタンス」…、と続き、すべてのメニュー項目に記入事項があります。
それだけ、Glyphsの方が細かい設定が必要ということですが、ここに和文を縦書きにできる設定が含まれています。この設定、Glyphs Miniにはありません。

 

Glyphsの利点

GlyphsとGlyphs Miniですが、見た目も使い方も、両者は確かに似ているし共通項もあります。でもGlyphs Miniは廉価版というだけあって、機能が簡略化されている部分があります。なので、GlyphsにできてGlyphs Miniにできないことが当然出てきます。GlyphsにはGlyphs Miniにはない利点があるということです。

簡潔に言うと、
・Glyphsの方が和文フォントのグリフの追加がしやすい
・Glyphsは縦書きができる和文フォントが作成できる

もちろん、細かい点ではもっとGlyphsの利点があげられると思いますが、まずはそこだけでも覚えておきましょう。

 

まとめ

  • Glyphs MiniはGlyphsの廉価版で、Glyphsの機能を簡略化した製品
  • Glyphsの方が和文フォントのグリフの追加がしやすい
  • Glyphsは縦書きができる和文フォントを作成できる

では、また!

こんにちは。ANGEL VIBESです。フォント作成ソフトを使ったアルファベット・フォントのデザインについて、説明した回もありますが、流れはだいたい解りましたか? 慣れるまでは無理せず、大文字だけデザインしてみても良いと思いますが、今日は、そろそろ小文字も一緒にデザインしてみたいという方に向けたお話をしようと思います。

 

「欧文書体設計のためのライン」をおさらい

「フォントの作り方(13)」でも説明しましたが、フォントの世界には、従来から「欧文書体設計のためのライン」があり、これがフォントのデザインやレタリングを行う上でのガイドラインとなっていました。デジタルによるフォントのデザインが始まる以前から用いられてきたわけで、これは今日のフォント作成ソフトの「メトリクス情報」のルーツとなってもいます。
今回は大文字だけでなく小文字もデザインするということなので、「欧文書体設計のためのライン」について振り返っておきましょう。大文字だけなら、「アセンダーライン」「ベースライン」「ディセンダーライン」ぐらいを覚えておけば良いですが、小文字をデザインするために「エックスライン」をチェックしておきたいのです。

 

従来の「欧文書体設計のためのライン」


再度、掲載しましたよ。図を見ると解るかもしれないですが、アルファベット・フォントの小文字をデザインする際には、「アセンダーライン」「ベースライン」「ディセンダーライン」に加え、「エックスライン」が重要なラインとなります。小文字の「g」の上端に接するラインとなっていたりするこの「エックスライン」ですが、グリフの部分によってはこのラインに高さを揃えた方が、フォント全体として見た時に統一感が出ます。

 

Helveticaの小文字を当てはめてみると・・・

アルファベット・フォントの小文字において「エックスライン」がどう介在しているのか、おそらく見てただいた方が早いかと思います。Helveticaの小文字を例に、「欧文書体設計のためのライン」にあてはめてみました。

Helveticaの小文字

およそこんな構造になっているんだな・・・という認識があれば、デザインもいやすいと思います。こことここの高さを揃えると統一感が出るんだな、という部分は覚えておきましょう。

 

小文字を含めたアルファベット・フォントのデザインの流れ

小文字を含めたアルファベット・フォントの実際のデザインの流れですが、それは今までの「フォントの作り方」で説明してきたとおりです。大文字だけのフォントをデザインする時も小文字も含めてデザインする時も、流れは変わりません。

オリジナルフォントを作成する手順をまとめると、
1. 図案を決め、紙に下書き
2. 下描きした図案をスキャンしトレースし、AIファイルで保存
3. AIファイルをフォント作成ソフトに読み込ませフォントデータ化
というものでした。

流れについては、
フォントの作り方(3)〜Fontographerの使い方(前編)〜
フォントの作り方(4)〜Fontographerの使い方(中編)〜
でも解説しています。

 

ただ、小文字デザインの設定が必要

上に説明したとおり、アルファベット・フォントのデザインは、大文字だけの時も小文字も含めての時も、その流れは変わりません。ただ、作業それぞれの段階で、「エックスライン」を設定する必要がります。
まず、図案を決め、下書きをする段階で、エックスラインを設定します。この設定によりエックスハイトも決まるので、トレースしてAIファイルを作成する際にも、フォント作成ソフトに読み込ませる際にも、エックスハイトを反映することとなります。
詳細は次回。

 

まとめ

・アルファベット小文字デザインには「エックスライン」が不可欠
・大文字だけの時も小文字を含めての時も、アルファベット・フォントのデザインの流れは変わらない
・小文字をデザインするなら、作業それぞれの段階で「エックスライン」を設定すべし

ではまた!

こんにちは。ANGEL VIBESです。このあたりで、フォント作成ソフトを使う際の「メトリクス」のことについて解説しておこうかと思います。実は、従来からあるレタリングなどにおいての尺度についての呼び名と、フォントデザインソフトにおいての尺度についての呼び名は、同じ名前を用いられながら厳密には意味が異なる場合があります。フォントやタイポグラフィの知識が少しでもある方は、ソフトを使ってフォントをデザインした時に混乱してしまったのではないでしょうか。
もしそんなことになってしまっていたら、基礎知識として読み返してみてください。

 

メトリクスとは?

辞書にも載っていますが、「メトリクス」とは要するに尺度や測定情報のことです。フォントをデザインするには、アセンダーライン、ベースライン、ディセンダーラインなど、一定のフォーマットに落とし込むための設計用のラインが必要です。そして、そのラインとラインの間には「アセンダー」や「ディセンダー」のようにそれぞれの箇所に名前がついています。フォントデザインの過程では、そういったそれぞれの箇所の寸法を測定することも必要な作業です。
アセンダーやディセンダーの測定はFontographerやGlyphs Miniの解説の際にも出てきましたね。こうした測定情報について、Fontographerでは「メトリクス情報」としてまとめられ、数値を入力して設定できるようになっていました。

 

尺度の名前は場面によって指す箇所が異なる

フォント作成ソフトのこうした「メトリクス情報」についてですが、フォントやタイポグラフィの知識が少しでもある方なら、既に少しばかり違和感があるのではないでしょうか? そのモヤモヤを、ちょっと解説しておきます。

従来のフォントデザインで用いられてきたそれぞれの名前に対応する測定箇所は、フォント作成ソフトにおいての箇所とは異なる場合があります。例えば「アセンダー」がそうですが、レタリングなどにおいての「アセンダー」とFontographerやGlyphs Miniにおいての「アセンダー」では、指している箇所が異なります。なぜそうなってしまったかは分かりませんが、アナログからデジタルにシフトする時には、何かしらの変容は起こり得ることです。
とりあえず言えることは、それぞれの名前に対応する測定箇所は、フォント作成ソフトでいうもの・従来のフォントデザインやタイポグラフィでいうもの、両者で異なっている場合があるので、別々のものとして考えた方が良いということです。

 

欧文書体設計のためのライン

従来の欧文書体設計のためのラインについて紹介しておきましょう。フォント作成ソフトのメトリクス情報のルーツは、それでもここから始まっていますので。
「欧文書体設計のためのライン」とは言いましたが、レタリングの古い教科書では「モデュールのためのライン」などとして紹介していたりもします。

 

従来の欧文書体設計のためのライン

 

Fontographerはこのような仕様でしたね。

Fontographer画面

お気づきかと思いますが、従来の欧文書体設計のためのラインとはアセンダーの位置が違います。

 

Gliphs Miniではこんな設定をしました。

Glyphs Mini画面

Glyphs Miniでも、emスクエアの高さであるユニット数は、アセンダーとディセンダーの合計となっていますね。

 

emスクエアの設定のズレ

 

Fontographer画面・ソフト付属のサンプルフォントの例

そして上は、Fontographer4.1Jに付属のサンプルフォントです。

このFontographer4.1J付属のサンプルフォントを見ると、アセンダーラインとディセンダーラインの位置がグリフのアウトラインから少し離れてます。従来の「欧文書体設計のためのライン」においては、グリフのアウトラインの天地は、アセンダーラインとディセンダーラインとに重なっていましたね。こうして見ると、両者でのアセンダーラインとディセンダーラインの位置もやや差があります。これは、emスクエアの設定も同一とはいえないということを示しています。
なお、タイポグラフィの古い教科書では、電算写植の文字は仮想ボディよりも「やや小さめに収まっている」という記述もあります。(「文字のデザイン」/馬場雄二・東京デザイナー学院出版局)
作り方によってはグリフのアウトラインの天地をアセンダーラインやディセンダーラインにぴったり重ねることも理論的には可能ですし、実際にそのように作られたフォントはあります。とはいえ、電算写植が流通しはじめた頃には、文字が仮想ボディよりも小さめにデザインされたものも開発されています。このようにデジタルフォントでは、文字をemスクエアのような仮想ボディの天地よりも内側にデザインするという設計も一つの流れとして存在しています。

 

emスクエアとはそもそも?

emスクエアとは、フォントをデザインする際の正方形の仮想ボディです。「em」は「エム」と読みます。ローマ字の「M」ですね。活版印刷の活字「M」のボディが正方形に近い形の金属の塊だったことに由来します。今では仮想ボディを意味して「emスクエア」と呼ばれることが多いです。
仮想ボディとは、フォントをデザインする時に「この四角い枠の中に収まるように設計しましょう」という約束事のラインと考えておけば良いでしょう。油絵などを描く時に四角いキャンバスがあるように、グリフ一つ一つにも四角形の枠がある、というようなことです。

 

まとめ

・「アセンダー」はレタリングの場合とFontographerなどの場合とでは、指している箇所が異なる
・「emスクエア」はレタリングの場合とFontographerなどの場合とでは、必ずしも同一の意味を示さない

ではまた!

こんにちは。ANGEL VIBESです。ところで、Fontographerの日本語版が欲しいという方もいらっしゃいますよね? でも、既にお話しているとおり、Fontographerの日本語版は販売終了しており、日本語版の製造は現在は行われておりません。ただし、英語版はFontLab社の公式サイトから購入できます。
英語版なら購入可能、とはいえ、日本でも人気があったフォント作成ソフトが何でこんなことに? という方もいらっしゃるかと思うので、ちょっとだけ経緯をお話しておきましょう。

 

Fontographerのメーカーや販売企業の変遷

Fontographerは今はなきAltsys社で開発されたソフトです。Altsys社といえば、かつてクリエイター向けのソフトをいろいろと開発した企業で、FreeHandの開発もAltsys社。FreeHand、今の若手デザイナーだと知らないかな? まあ、知らなくてもおかしくないです。FreeHandはDTPの黎明期の頃には、AdobeIllustratorと肩を並べたドロー系のソフトだったのですよ。
このAltsys社は1995年にMacromedia社に買収され、そしてMacromedia社は2005年にアドビシステムズに買収されました。Macromedia社といえば、今でもユーザーが多いAdobeDreamweaverは、もともとはMacromedia社からリリースされたソフトです。Flashも今やAdobeのソフトですが、これももともとはMacromedia社からリリースされたソフトです。
Macromedia社がアドビシステムズに買収された同じく2005年、FontLab社はMacromedia社からFontographerについての一部のライセンスを獲得しました。そして現在では、FontLab社がFontographerのライセンスを完全に獲得するにいたり、Fontographerの開発も販売もFontLab社が行っております。

私が持っている「Fontographer 4.1J」。クラシック環境でしか動きません。
クレジットがまだMacromedia社です。

※登録ユーザの部分はシリアルなどが入るので画像処理をして消しました

懐かしのクラシック環境の画面。

 

そして日本の販売代理店の変遷

Fontographerを巡っては、上に述べたようなメーカーや販売企業の変遷という背景がありました。こうした中で、日本語版は日本の企業が日本国内向けのFontographerの販売代理店となりました。これにも変遷がありました。
Macromedia社が買収されてから、恒陽社がFontLab社の代理店となって販売をしていたものの(「恒陽社、フォント作成ソフト『Fontographer』の国内販売を開始」/2006年6月26日 ASCII.jp)、それも「Fontographer 5J for Mac OS X」発売時には加賀電子株式会社が国内販売代理店となっています(「加賀電子、フォント作成ソフトウェアの最新版「Fontographer 5J for Mac OS X」」/2011年11月22日 MdN Design Interactive)。そしてその後数年で、加賀電子でも販売を終了することになりました。

私がFontographerを初めて購入したのはバージョン4.1の時でしたが、「Fontographer 4.1J」を購入したのは、恒陽社のネットショップ、確か「KG ダイレクト」というショップだったと記憶しております。なので、バージョン5を購入する際、販売元が「加賀電子」になっていて、いつの間に? と思いました。それから、Fontographerの公式サイトから日本語ページが消えたのも発見し、どうしたのだろう・・・など思っていたら、日本語版の販売自体がいつしか終了していました。

こちらは私が所有する「Fontographer 5 J」。バージョン4.1を持っていたので、アップグレード版を購入しました。

 

やはり、少し寂しい・・・

以上が、Fontographerを巡ってのおよそのアウトラインです。日本語版が販売終了してしまったのは、正直なところ寂しいです。でも、メーカー・販売元の変遷につぐ変遷があり、その中で日本語版の開発を保持し、代理店と契約して販売するというのは、なかなか大変なことなのかなあというのが、私の感想です。
とはいえ、念のため言っておきますよ。今後、バージョンアップされた状態で日本語版をリリースするというなら、私は買いますよ☆

・・・とか何とかお話してきたFontographerですが、FontLab社で元気に生きているようですね。

 

まとめ

Fontographerにはメーカーや販売企業の変遷という複雑な背景がある。
今のところ、日本語版は販売終了している。