こんにちは。ANGEL VIBESです。タイポグラフィの基本は、「大・中・小」の塊・文字の大きさ・そのレイアウト、にあります。だいたいそんな感じです。それは、前回までの説明で明かしたとおりです。こうした「大・中・小」を意識すれば、タイポグラフィは自ずといい感じになっていくと思います。
他に、タイポグラフィの基本について言っておこうと思うのは、文字のレイアウトには基本のパターンがあるということです。レイアウトのパターンは、基本を覚えれば応用が効くので、とりあえず覚えてしまうのもアリですね。それに、レイアウトを考えすぎて頭の中がカオスになってくることもあるので、そんな時は基本を見直すことがイメージの整理に役立ちます。
といった事情もあるので、今日は、基本のレイアウトはどうやって覚えるの? というお話をしておきます。

 

タイポグラフィには基本のレイアウトがある

基本のレイアウトを覚えるにあたり、ちょっと解説しておきますね。
タイポグラフィには、ジャンルによって定番のレイアウトがあります。カタログならこんな感じとか、書籍の表紙なら、雑誌の表紙なら、・・・と、定番のレイアウトがあります。なぜ、そんな基本形があるかといえば、そのジャンルの媒体が持つ機能に則ってタイポグラフィがなされているからです。
コンビニの雑誌の棚を見てみてください。雑誌の多くは雑誌のタイトルが上部に位置していませんか? これが基本形だったりするわけですが、こういったレイアウトにしているのは何故だと思います? これは雑誌の棚の形状に合わせていて、タイトルが上部にあれば、後ろの段にあってもタイトルだけは見えるからです。雑誌の表紙は「コンビニの雑誌棚でもタイトルが見える」という命題に応えた機能を付与するレイアウトとなっています。このように、「機能」がタイポグラフィの基本形を形作っている面もあるのです。
カタログなども、定番の基本形がありますね。上部にタイトルがあって、その下にマスがずらりと並んで、そこに商品とその説明がついているような。商品を探す時に、見やすいということです。
もし、デザインするジャンルが決まっているなら、そのジャンルの定番のレイアウトを調べてみてから、デザインを進めるという手段もあります。デザインを考えているうちに、なんだか頭の中が混乱してきてしまった・・・などという方も、いったん定番のデザインを調べてみる・思い出してみる、という作業でイメージが整理されてくるでしょう。

 

レイアウトの基本形を調べてみる

自分がデザインするジャンルの基本形のレイアウトを調べるにあたり、まず、デザインするジャンルの資料を集めましょう。「タイポグラフィの基本(1)」で、資料集めに出かけましたね。同じように、持ち帰っても良いリーフレットやカタログで、参考になるデザインがあれば持ち帰ってしまいましょう。持ち帰れない書籍等は、インターネットで画像検索してみましょう。ピンタレストの活用も良いでしょう。
その他、図書館でデザイン年刊や「P・I・E BOOKS」あたりの作品集を見るという手段もあります。資金に余裕があれば何冊かの作品集を購入するのもおススメします。良い作品集は一生もので、私も数十年前に購入した資料集は、必要に迫られて定期的に見返しています。「P・I・E BOOKS」はセンスが良くておススメです。

「P・I・E BOOKS」の作品集「corporate profile graphics」の中ページ。
私が所持する内の一冊。

資料を眺めているうちに、デザインのジャンルによって、だいたいのデザインフォーマットがあることに気づきはじめると思います。デザインのフォーマット=テンプレートと考えても差し支えないでしょう。これがジャンルによるタイポグラフィの基本形です。この基本形を覚えておけば、何かと役に立つ機会があろうかと思います。

 

レイアウトをサムネイルに書き出してみましょう

そういったタイポグラフィの基本形が見つけられたら、デザインのフォーマットとして覚えてしまいましょう。
覚え方はこんな感じで。手書きで構いませんので、サムネイルとして書き出してメモします。ネタ帳に書いておけばOKです。デザインする時にそのメモを見返せば、フォーマットを思い出せますね?
インターネットの検索結果に並ぶ小さな画像も「サムネイル」と言いますが、「サム」は「親指」、「ネイル」は「爪」で、デザインを簡潔に表した小さなラフ・スケッチのことです。デザインのフォーマットを覚えるなら、いっそ細部を切り落として単純化したサムネイルをメモしていけば、頭に入って行きやすいです。自分で解れば良い程度のラフでいいので、メモの習慣をつけましょう。
「手書き」とは言いましたが、別にイラレで書いても構わないですからね。要するに、情報を単純化し、フォーマットとして覚えておくことが重要なんです。

サムネイルの例。だいたい解ればOK

ちなみに上のサムネイルは「ベルギー奇想の系譜展」のチケットです

「ベルギー奇想の系譜」使用済みチケット

タイポグラフィにはジャンル別に基本のフォーマットがあるという話をしてきたわけですが、ただ、その基本形を厳密に守らなければならない、ということでもないですので。あまりそこは考えすぎなくて大丈夫です。時と場合を見計らうことができるようになれば、アレンジして、基本形を崩していったって良いんですよ。

 

まとめ

・タイポグラフィにはジャンル別に定番のフォーマットがある
・基本のタイポグラフィを覚えるためには、まずデザインするジャンルの資料を集める
・そして、レイアウトをサムネイルとして書き出しておく

ではまた!

こんにちは。ANGEL VIBESです。タイポグラフィにはチェックポイントがありましたね。復習しますよ。
 ・「塊」とその配置
 ・構成要素の「大・中・小」
 ・文字の大きさ
これらがうまくできていればタイポグラフィは成立するという、基本中の基本の要点でしたね。
さて今日は、この要点をふまえ、例の「ベルギー奇想の系譜」のチケットについて分析してみます。

 

ちょっとチケット全体を眺めてみましょう

例の「ベルギー奇想の系譜」のチケット全体を、眺めてみましょう。

「ベルギー奇想の系譜」使用済みチケット

おおまかに、左右の塊によって成り立っているレイアウトだと解ると思います。
左側にこの展覧会を象徴する奇妙な味わいの絵画、右側に展覧会の題名を始めとした文字情報。オーソドックスですが、スッキリと解りやすい配置ですね。
「奇想」のイメージは、左側の絵画によって伝わってきますね。ぎっしりと細かく奇妙な何者かが描かれていて、まずこの絵画で「奇想」のイメージが解ります。
そして、塊の大きさの観点から分析してみますが、レイアウト全体から見て、左側の絵画は「大」、右側の文字情報は「中・小」の塊と言えるでしょう。
チケットを見てください。ぱっと見、まず左側の絵画が目に入り、そして展覧会の題名に目が行きますね。それから、開催期間やその他の記載というふうに、自然に視線が誘導されませんか? 伝えたい情報の重要度に従って、グラフィックの塊を「大・中・小」にしてあることによる効果です。

 

文字情報部分のタイポグラフィを分析してみる

ここで、右側の文字情報部分に注目してみたいと思います。
まず文字の組み方についてですが、見事な箱組みですね(文字の両端を揃えて、シルエットを正方形・長方形に見せるこのような文字の配置の仕方を「箱組み」と言います)。文字情報がまとまって見えます。
文字情報部分がこうしたまとまった塊になっていることによって、左側の絵画に対し右側は文字情報なんだなと、ビジュアルで、まずそう認識ができると思います。見ている人に、そう認識させ、スッキリと情報を理解させるための効果的なレイアウトとも言えますね。

 

文字情報部分の「大・中・小」の塊

今度は、右側の文字情報部分での、「大・中・小」の塊の大きさの観点から分析して
みたいと思います。
先ほど、レイアウト全体から見て、左側の絵画は「大」、右側の文字情報は「中・小」の塊と言える、と述べました。確かに、右側の文字情報部分は全体のレイアウトから見て「中・小」の塊ですが、この右側の文字情報部分のみ分析すれば、この部分も「大・中・小」の塊から成り立っていることが解ると思います。

文字情報も「大・中・小」になっていますね

文字情報の中でも最も重要な部分は、この展覧会の題名です。このチケットでいうと、「ベルギー奇想の系譜」がそうです。展覧会の題名を大きく太くして目立たせてありますね。左側の文字部分の中では「大」の塊です。
次に目立たせたいのは、展覧会のテーマや開催期間・場所です。このチケットでいうと「ボスからマグリット、ヤン・ファーブルまで」や「7.15→9.24」や「Bunkamura ザ・ミュージアム」、英文の「Fantastic Art in Belgium」のあたりです。展覧会の題名の次に目立たせてありますね。このあたりが「中」の塊です。
他は詳細情報で、重要情報の後に見る部分です。このあたりは「小」の塊となっています。
文字情報部分のみを分析してみると、このように、伝えたい情報の重要度に従って「大・中・小」の塊になっています。これにより、情報の重要度に従って、視線が自然に誘導されますね。

さらに文字部分の塊をそれぞれ分析してみます。
「大」の塊「ベルギー奇想の系譜」は、「ベルギー」をゴシック体の太字にして「奇想の系譜」よりも少し目立たせています。この展覧会は、ベルギーからアートがやって来たよという部分が重要で、「ベルギー」を目立たせたのでしょう。こうしたメリハリによって、情報がさらに伝わりやすくなりますね。
他にもよくよく観察していくと、細々としたメリハリがあります。「中」の塊「7.15」の隣の「(土)」や、「9.24」の隣の「(日)」といった曜日の要素が小さくなっていたりもします。

 

そして、「遊び」がある

このチケットのタイポグラフィは、上に述べたように、分析すればする程に利に適っていることが解ると思います。情報の重要度に従い目線が誘導される、良く出来たタイポグラフィですね。
こうした利に適った部分ばかり見てきましたが、そうでもない部分もあります。そしてその、利に適わないとも言える部分によって、このタイポグラフィはさらに秀逸になっています。「利に適わないとも言える部分」、それは「遊び」です。
このタイポグラフィにおいての「遊び」は、英文の「Fantastic Art in Belgium」に象徴されます。いわば無くても良い部分で、それなのに、文字部分の中では展覧会の名前の次に目立たせています。
そういった意味では、全く利に適っているとはいえません。しかし、この部分があるとないとでは、見た目に差がついてしまいます。この「Fantastic Art in Belgium」があることで、おしゃれ感が増しますね。このおしゃれな部分がないと、情報が伝わりやすい一方で、おそらく退屈なタイポグラフィとなってしまったことでしょう。せっかくの、渋谷のBunkamuraで開催される展覧会チケットです。おしゃれ感があって退屈させないタイポグラフィがふさわしいですね。

 

まとめ

・情報の重要度に従い塊を「大・中・小」にして配置する
・文字は重要部分を大きくしたり太くしたりすると解りやすい
・遊びがあるタイポグラフィだとなお良し!

ではまた!

こんにちは。ANGEL VIBESです。私の推しのタイポグラフィも含めお話してきましたが、皆さんは気に入ったタイポグラフィのコレクションはできましたか?
こんなタイポグラフィをやってみたい! というデザインが、そろそろ見つかってきたかと思います。そこまでできたら、そのタイポグラフィがどういった成り立ちになっているか分析してみましょう。そうすれば、タイポグラフィの腕は段々身について来ますよ。

 

分析してみましょう

いい感じだと思ったタイポグラフィを見つけたら、そのレイアウトを分析してみましょう。
ちょうど、いい感じのタイポグラフィがあるので、例にしてみますね。写真は、Bunkamura ザ・ミュージアムで開催された「ベルギー奇想の系譜〜ボスからマグリット、ヤン・ファーブルまで〜」という展覧会のチケットです。使用済みなので右側が切り取られてますが、いい感じだと思います。

「ベルギー奇想の系譜」使用済みチケット

どんなレイアウトでも、まずこの部分をチェックしてみてください。
・「塊」とその配置
・構成要素の「大・中・小」
・文字の大きさ
タイポグラフィは上記の点がうまくできているかどうかが基本中の基本、これらがうまいことできれば、基本のデザインは成立します。

写真の「ベルギー奇想の系譜」チケットのタイポグラフィについて分析してみたいと思いますが、その前に、これらのチェックポイントが何なのかついて、説明しておきますね。

 

「塊」とその配置

タイポグラフィは文字の「レイアウト」によって成り立っています。「レイアウト」は文字も含むグラフィックの要素(写真やイラスト等)の配置・構成です。ポスターなどをよくよく見てみると、画面においてグラフィックの要素がいくつかの「塊」になっており、「塊」が配置されていることに気づくでしょう。
配置された文字要素の「塊」をよくよく観察してみてください。タイトル周り、コラム、キャッチーコピーなど、それぞれの伝達内容によって「塊」になっていませんか? このように、文字要素を伝達内容によってそれぞれの「塊」にして画面を構成するのは、視覚的に伝わりやすくするためです。例えば、重要事項〜ちょっと重要な事項〜知りたい人だけ読む詳細説明、というのがぱっと見で解るビジュアルであれば、情報が理解しやすくなるということです。

 

構成要素の「大・中・小」

上に述べたように、レイアウトされているグラフィック要素の「塊」は、それぞれの伝達内容によってまとまっています。
では、この「塊」の大きさに着目してみてください。「大・中・小」に分けられていますね。
さらに「大・中・小」について「塊」の中を観察してみましょう。まず、グラフィック要素の「塊」の大きさは「大・中・小」になっていますが、その「塊」の中で、文字の太さや大きさに強弱があり、さらに「大・中・小」があることに気づくと思います。

 

文字の大きさ

画面の文字全体を観察してみてください。文字の大きさにも「大・中・小」の強弱がありますね。強調したい文字部分は大きさを大きくしたり太くしたりします。強調しない部分は、逆に小さくしたりします。このように、文字に視覚的な強弱をつけることで、ぱっと見で伝わりやすくなります。
そして、文字部分の用途によっては、それに合った適切な大きさになっていることも必要です。雑誌などの例えば何かのコラムといった文章中心のページでは、本文として読みやすい級数(=Q数)にしたりもします。平均値はだいたい13級(およそ9ポイント=9pt)ぐらいです。本文を13級とすると、写真につけるキャプションは10級以下ぐらいが無難です。

 

文字の大きさを測る

本当かな? と思う方は、そういった雑誌、気になったリーフレットやポスターなどの文字の大きさをいろいろと測ってみてください。
ただ、AdobeIllustratorなどDTPのデータなら調べられるとして、紙に印刷された文字はどうすればいいのだろう・・・という方、ご安心を。写植級数表で測れますよ。写植級数表は、透明なフィルムにマスが印刷されている道具で、DTPが始まる以前から文字の大きさを測る道具としてデザイン業界などで使われて来ました。今となっては、この写植級数表が用いられる場面は、少なくなってしまったでしょうけれども、まだまだ役に立つ道具です。
私が持っているのは、IZUMIYA製(株式会社いづみや=現在の株式会社Too)。社名が変わり、Too自体ももう製造していないようですが、レター社など他のメーカーの写植級数表は現在も売られています。
 

IZUMIYA製の写植級数表。ずいぶん黄ばんでしまいましたが、まだ持っています

 

文字の上に重ねて大きさを測ります。1行目は16級程度ということが解ります。

 
さて次は、「ベルギー奇想の系譜〜ボスからマグリット、ヤン・ファーブルまで〜」のタイポグラフィについて具体的に分析したいと思いますが、それは次回!

 

まとめ

タイポグラフィでチェックする部分は
・「塊」とその配置
・構成要素の「大・中・小」
・文字の大きさ

ではまた!

こんにちは。ANGEL VIBESです。前回はタイポグラフィのコレクションをしに外出してみようよ、というお話で終わりましたね。タイポグラフィを収集する方法はそれだけではありません。さりげに買ったお菓子のパッケージ、あるいは深夜に観たアニメや映画の中にも優れたタイポグラフィが埋もれています。
本当は、タイポグラフィで注意する基本項目について解説しなければならないのですが、それは後でも大丈夫なので、今日は別のお話をしておきます。
筆者が思った、「これイイ!」というタイポグラフィを紹介します。

 

気に入ったタイポグラフィは普段からチェック

デザインの勉強をしていると、「普段からアンテナを張っておけ」というアドバイスをされたことはありませんか? あるいはデザイン系の書物にそう書いてあったり。そのとおりではありますが、そんなに肩に力を入れなくて良いですよ。ラクに行きましょう。ただ、ご自分で、「あっ、これイイ」と少しでも思ったら、チェックしておきましょう。できるなら、収集しコレクションにしておきましょう。
スーパーで買ったお菓子のパッケージでも良いです、深夜に観たアニメや映画の文字の使い方でも良いです。ご自分が正直に「これイイ!」と思った何かは要チェックです。
ちなみに、筆者が最近「イイ!」と思ったのは、明治のチョコレートのパッケージ。スタイリッシュで、これならパッケ買いしてしまいますね。チョコは大人味で、もちろん美味しいです!
 

明治のチョコレートのパッケージ。
画面構成・色のバランス、フォントの選択、紙の選択も見事ですね。

 

「新世紀エヴァンゲリオン」のタイポグラフィ

1990年代後半に、「新世紀エヴァンゲリオン」の深夜再放送がありました。あの直後、エヴァっぽいタイポグラフィがグラフィックデザインの業界の中でちょっとしたブームでした。極太の明朝体を使い、極端なまでに文字の大小のメリハリをつけ、時には長体をかけ、文字の配置の仕方は「第○話」のテロップのような。
エヴァ的な影響が見られるタイポグラフィは、あの直後、巷のリーフレットやカタログで散見できました。当時筆者が在籍していた事務所のデザイナーも用いてました。いくら黙っていようと、デザイナーならあの文字の組み方を見ればわかりますよ。「あなたもエヴァンゲリオンを観たのね」と。
あの手の文字の配置の仕方や効果的な明朝体の使い方は、それ以前から「ぽい」ものならありました。しかし、エヴァでは随分キャッチーなデザインに昇華し、センセーショナルでした。
「新世紀エヴァンゲリオン」をとりまくこうした一件は、タイポグラフィが優れていた一方、それに感動し食いついてしまったデザイナーも多かったのだということを示していると思います。筆者もデザイナーとして心躍らされた一人です。それだけ、あのタイポグラフィがオーラを放っていたといことでもあります。
こういった優れたタイポグラフィは日常に潜んでいるのですよね。日常の中でも「これイイ!」ってなってしまうデザインは、見過ごさないようにしたいものです。
ちなみにエヴァで使用しているあの極太明朝のフォントですが、フォントメーカー「フォントワークス」の「マティスEB」です。

画像出典:「フォントワークス」サイト(https://fontworks.co.jp/products/font/evamatisse

 

映画のタイトルも要チェックです

映画のタイトルにも秀逸なタイポグラフィがかなり潜んでいます。映画好きの方なら、ちょっと気にして見て見ると良いですよ。
タイポグラフィの中で重要な要素に「字詰め」があります。これは文字と文字の間のアキを調整することを指します。もっと丁寧に「文字詰め」と言ったりもしますし、Adobeのソフトに倣って「カーニング」と呼んだ方が今時しっくり来るかもしれませんね。
この「字詰め」ですが、これが絶妙なタイポグラフィの例があります。1970〜80年代の角川映画のタイトルロゴのデザインが、まさにその例です。
太いゴシック体に字詰めキツキツのタイトルロゴです。文字と文字がくっつかんばかりで1970〜80年代の流行だったのでしょうが、「字詰め」の重要さが良くわかる例です。
「野生の証明」(高倉健主演)とか「復活の日」(草刈正雄主演)とか、ナイス字詰めです。書体自体は太いゴシック体のシンプルなデザインだったりしますが、映像に合った緊張感があります。タイトルロゴのデザインは、装飾を施して「盛る」手法もあります。しかし、禁欲的に字詰め一つの器量でここまでやれてしまうこともあるんですね。それはまるで、シンプルな坊主頭で通しながらいい男で居続けた、高倉健さんにも通じるところがありますね。

 

まとめ

・日常の中にも優れたタイポグラフィは埋もれている
・1970年〜80年代の角川映画のタイトルロゴの字詰めはナイス
・「新世紀エヴァンゲリオン」のタイポグラフィに魅了されたデザイナーは多かった(と思う)

ではまた!

こんにちは。ANGEL VIBESです。フォントデザインにご興味をお持ちの皆さんは、タイポグラフィについてもご興味をお持ちになるのではないでしょうか?
「タイポグラフィ」は簡単に言ってしまえば、文字や文字周りのデザインですが、そもそも、グラフィックデザイン全般において重要な要素となっています。今日はタイポグラフィのお話をしておこうかと思います。

 

タイポグラフィとは?

「タイポグラフィ」(typography)とは、「日本大百科全書」によれば、「印刷物の体裁に影響を及ぼす、文字の書体、大きさ、配列のしかたなど、視覚効果の総称。」です。最初に言ったように、文字や文字周りのデザインと考えて差し支えないでしょう。書体そのもののみならず、文字のレイアウトも含み、「字詰め」や「行間」の調整もその要素です。
文字を含むグラフィックデザインのジャンルであれば、タイポグラフィは避けて通れません。フォントデザインやロゴデザインの、文字そのもののデザイン、また、パッケージデザインの商品名、エディトリアルデザインの文字部分・・・、文字はグラフィックデザインの様々なジャンルのデザイン要素となっています。グラフィックデザインはタイポグラフィ抜きに語れないのです。
それを考えれば、タイポグラフィを制すればグラフィックデザインをも制することができる、と言えるわけです。

 

タイポグラフィの基本

タイポグラフィ、つまり文字周りのデザインについてですが、基本中の基本だけのお話にしておきます。なぜかというと、デザインに正解はない、というのが私のデザインについての考え方なので。時代とともに正解を新しく考案していくのがデザインとも言えるでしょうし。デザインツールの使い方と異なり、私が考えている「こうあるべき」というデザインの理想を誰かに押し付けることには、ほとんど意味がないでしょう。
そんなこともあるので、基本中の基本だけのお話にしておきます。

・文字の大・中・小のメリハリをつける
・本文の文字の平均的な大きさの目安は9ポイント(約13級)
・本文の1行に入る文字数のMAXは32文字
・本文の行間の平均的な大きさは文字の大きさの1.5倍程度
・適切な書体を選ぶ
・適切な字詰め行間の調整をする
・若い層向けなら本文小さめ・字詰めキツキツでOK
・中高年層向けなら本文は平均の大きさ以上・字詰めはキツくしすぎない
・まずタイトル周りのデザインをしっかり決めてしまう
・なるべく読みやすい字切りにする

タイポグラフィで注意する基本項目はこんなところです。

上記項目について、詳細を解説したいと思いますが、いきなり理論に行くのはやめておきましょう。理論通り作業したからといって、デザインがうまくいくわけでもないですから。
それよりも、資料集め兼がね遊びに行きましょう!

 

資料集めに出かけましょう

デザインで何が大事かというと「カッコイイ!」とか「カワイイ!」とか、そういったワクワク感だと思います。そういった感覚的な何かが伝わるデザインは、生き生きして見えます。まずは、自分の感覚というものを確かめる作業をしてみましょう。
では、自分の感覚を確かめるには? となりますが、まず、気になったタイポグラフィのコレクションをしてみましょう。もう、遊びのつもりでOKです! 遊びの感覚で資料集めに出かけてみましょう。
資料集めなら、インターネットでも良いしピンタレスト巡りをしてピンをして回っても良いですが、お散歩がてらあるいはウィンドウ・ショッピングがてらでも構いません、外出をおススメします。
デパート等の好きなショップに行ったりすると、偶然素敵なカタログやリーフレットに出会えたりするものです。気に入ったものはいただきましょう。もちろん万引きはいけませんが、「自由にお持ちください」という無料のカタログ等も置いてありますので。
野外の看板等の写真を撮って回るのも面白いですよ! 世の中、変テコリンなデザインの何かが結構あるもので、普段見過ごしていたりもします。歩いていると、そういったデザインに気づいたりして、驚きがあります。
そんな感じで自分のコレクションが出来て行くわけですが、そういったことをしているうちに、自分の感覚が解って来ます。自分のデザインの理想はこんなかんじだなあ、と。そして「こんなデザインがしたい」と思い理想を形にする時、「本文って通常どれくらいの大きさなのだろう」などと気になる部分が出てくるかと思います。その時、先ほどあげた、タイポグラフィで注意する基本項目をチェックしてみても遅くはありません。
肩の力を抜いて、ラクに楽しく行きましょう。タイポグラフィは本来面白いものなのですから。

先日筆者が観に行った「ベルギー奇想の系譜展」のショーウィンドウ
メリハリが効いたタイポグラフィですね!

 

ショーウィンドウの隅っこにはこんな子が! シャレてますね!

 
続きは次回。

 

まとめ

・タイポグラフィとは文字や文字周りのデザインのこと
・タイポグラフィはグラフィックデザインの重要な要素
・まず、気になったタイポグラフィのコレクションをしてみましょう

ではまた!

こんにちは。ANGEL VIBESです。前回は、Glyphs Miniのメトリクス関連情報の設定の途中まで解説しましたね。今日はその続きです。「キャップハイト」「xハイト」の設定をしてみましょう。
 

「キャップハイト」「xハイト」の設定の前に

混乱している方がいるかもしれないので、「キャップハイト」「xハイト(=「エックスハイト」、Glyphs Miniでの表記は「xハイト」)」の設定の前に、ちょっとメトリクスのお話を復習しておきますね。

フォントの作り方(13)〜メトリクスの話〜」で触れてますが、従来の「欧文書体設計のためのライン」において言う「アセンダー」と、フォント作成ソフトで言う「アセンダー」は、意味が異なります。これはGlyphs Miniにおいても例外ではありません。
厳密には「ディセンダー」についても同じことが言えます。従来の「欧文書体設計のためのライン」において言う「ディセンダー」と、Glyphs Miniにおいて言う「ディセンダー」は、それぞれ指している意味が厳密には異なります。
復習しますね。フォント作成ソフトを利用した現在のフォントデザインの潮流では、一つ一つのグリフが、emスクエアよりも一回り小さくデザインされている例を多く見かけます。そういった事情もあり、Glyphs Miniにおいて「ディセンダー」と言う時に、従来の意味とは厳密にはズレが生じてきているようです。
従来の「欧文書体設計のためのライン」においては、「ベースライン」から「ディセンダーライン」までの部分を「ディセンダー」と呼んでいました。ところが、Glyphs Miniでは「ベースライン」から「ディセンダーライン」までを指して「ディセンダー」とするのではなく、「ベースライン」からemスクエアの下端までを指して「ディセンダー」としてしています。Glyphs Miniを使用してデザインする際、emスクエアよりも一回り小さくグリフをデザインする現在の潮流に従うならば、「ディセンダーライン」の一周り外側までを含んで「ディセンダー」と呼ぶことになってしまっています。従来の「欧文書体設計のためのライン」における場合と、Glyphs Miniにおける場合とでは、このように、細かな部分では意味が異なります。
モヤモヤするかもしれませんが、従来使われて来た文言の意味の細々した部分は、時代とともに変化してしまうことは自然なことでもあります。とりあえず、従来の「欧文書体設計のためのライン」においての文言は、Glyphs Miniにおいて言う全く同一の意味とは限らないので、ちょっとだけ注意しておきましょう。

 

従来の「欧文書体設計のためのライン」
Glyphs Miniで言う「ディセンダー」はemスクエアの高さ下端まで

 

「キャップハイト」「xハイト」の設定

それでは、Glyphs Miniのメトリクス関連情報の設定に戻ります。確認しておきますね。「キャップハイト」は「ベースライン」から「キャップライン」までの高さを指します。そして、「xハイト」は「ベースライン」から「エックスライン」までの高さを指します。
「元AI」では「キャップライン」と「エックスライン」をガイドラインとして描いておきましたね。なのであとはスムースだと思います。ガイドラインを頼りに「キャップハイト」「xハイト」の高さを測ったそのままの数値を、Glyphs Miniのメトリクス関連情報の「キャップハイト」「xハイト」の欄に入力してください。
「Alfalfa」では、「キャップハイト」が「667」、「xハイト」が「493」。なお、小数点以下の端数は整理しました。
そして、「イタリック角度」ですが、デフォルトのままにしておきます。
それから、「アラインメントゾーン」は一番右の黒いボタンを押しておきましょう。自動計算されます。
これで設定はOKです!

「Alfalfa」はこんな感じで設定しました

Glyphs Miniのメトリクス関連情報の設定

 

グリフの画面はこんな感じです

グリフの画面を開いてみてください。小文字だと解りやすいですが、ガイドラインがグリフの「キャップライン」「エックスライン」の位置にぴったり重なっているのが解りますか?

Glyphs Miniのグリフの画面

 

こうしたガイドがあれば、正しい位置を踏襲したフォントがデザインできているかどうか、確認しながら作業ができますね。

 

あとは小文字なしのデザインの時と同じ作業

小文字もデザインする場合、「フォント情報」設定は以上のように、「キャップハイト」「xハイト」も測定した数値を入力しなければなりません。ですが、ここまで出来れば、小文字なしのデザインの時と同じ作業です。グリフをトレースした「元AI」データを、Glyphs Miniに読み込ませていきます。忘れてしまっていたら過去記事(「フォントの作り方(11)〜Glyphs Miniの使い方(後編)〜」あたりからが良いでしょう)を読んでみてください。
スペーシングやカーニングをして、メニューバーから「ファイル」→「出力」を選び、ファイルを書き出せば完成です!

 

まとめ

・Glyphs Miniで言う「ディセンダー」は「ベースライン」からemスクエアの高さ下端まで
・「元AI」のガイドラインを頼りに計測し端数を整理した数値を、「フォント情報」の「キャップハイト」「xハイト」に入力する
・「フォント情報」の設定までできれば、あとは大文字だけのデザインの時と同じ作業

こんにちは。ANGEL VIBESです。今回は、アルファベット・フォントの大文字に加え小文字もデザインする際のお話の続きです。前回までのお話で、Glyphs Miniに読み込ませるためのAIデータ=「元AI」作成まで進みました。ここまで準備が整ったら、いよいよGlyphs MiniにAIデータを読み込ませる作業です。

 

Glyphs Miniを使った作業の流れ(おさらい)

Glyphs Miniを使った作業の流れについておさらいしますね。まず、フォントのデザインを決め、AdobeIllustratorでトレースし、グリフ一つずつの「元AI」を作成、これらをGlyphs Miniに読み込ませてフォントデータ化して完成です。忘れてしまっていたら、「フォントの作り方」の過去記事((3)あたりからがいいでしょうか)を読み返していてください。
で、前回までの解説では、「元AI」の作成まで進みました。小文字のデザインもするならばということで、「元AI用紙.ai」ドキュメント上に、キャップライン、エックスライン、ベースラインをガイドラインとして描きましたね。これを行っておけば、次の作業、Glyphs MiniにAIデータを読み込ませる時にスムースということでした。なぜスムースなのかは、次の作業のお話の中で。

「元AI」にはキャップライン、エックスライン、ベースラインを描く

 

Glyphs Miniを起動したら「フォント情報」の設定

ここからは、Glyphs Miniを起動しての作業となります。Glyphs Miniを立ちあげ新規のドキュメントを開いたら、最初にする作業がありましたね。まず、「ファイル」→「フォント情報」を選び各項目の設定をします。
「ファミリー名」の設定、「クレジット関連情報」の設定、「バージョン」の設定は、大文字だけのデザインの場合と同様に進めてしまってください(忘れてしまってたら、「フォントの作り方(10)」を復習しましょう)。
次に、メトリクス関連情報の設定があります。「アセンダー」「キャップハイト」「xハイト」「ディセンダー」の数値を入力しなければなりませんが、「元AI用紙.ai」ドキュメント上にキャップライン、エックスライン、ベースラインをガイドラインとして描いたことで、スムースに進むはずです。そして、大文字に加え小文字もデザインする場合、Glyphs Miniを使用する手順はここだけ異なります。大文字だけのデザインの場合と異なり厳密に設定しなければならない部分です。

 

メトリクス関連情報の設定は厳密に

メトリクス関連情報には、「ユニット数(UPM)」「アセンダー」「キャップハイト」「xハイト」「ディセンダー」「イタリック角度」がありましたね。
大文字だけのデザインの場合は「キャップハイト」「xハイト」はデフォルトのままで任意の数値が入ってれば良かったのですが、小文字もデザインする場合は、厳密な数値を入れます。

復習を含めつつ順を追って説明しますね。まず、「ユニット数(UPM)」についてです。これはデフォルトのまま「1,000」でOKです。繰り返しの説明になりますが、Glyphs Miniにおけるグリフのマスの高さはemスクエアの高さと同一視でき、「ユニット数(UPM)」という単位で示されます。
Glyphs Miniにおけるグリフのマスのユニット数は、仕様で1,000となっていますが、1,000のままにしておきます。Glyphs Mini上の単位「ユニット」の大きさは、AdobeIllustrator上での単位「ポイント」の大きさに一致します。「元AIデータ」のドキュメントサイズの高さを1,000ポイントに設定したのは、Glyphs Miniにおけるグリフのマスのユニット数である1,000ユニットに合わせるためです。
このように設定しておけば、AdobeIllustrator上のAIデータをGlyphs Miniに取り入れた時に、「元AI」の1,000×1,000ポイントの位置合わせ用のラインが、Glyphs Mini上のグリフのマスの高さである1,000ユニットにピッタリ重ねられます。

次に「アセンダー」と「ディセンダー」です。Glyphs Mini上の「ユニット」の大きさはAdobeIllustrator上の「ポイント」の大きさに一致するので、「元AIデータ」上の数値が、そのままGlyphs Miniにおける数値になります。したがって、AdobeIllustrator上の「アセンダー」と「ディセンダー」の高さを測り、Glyphs Miniのメトリクス関連情報にそのまま入力すればいいわけです。「元AI」のベースラインからドキュメント上端までの高さが「アセンダー」、ベースラインからドキュメント下端までの高さが「ディセンダー」となります。
高さを測った時「元AI」上で端数が出ていたら、切り捨てるなどして調整しましょう。ただし、「アセンダー」と「ディセンダー」の高さの合計は1,000になるようにします。

復習します。

emスクエア(の高さ)=アセンダー+ディセンダー

でしたね。

なので端数が出た時の調整では、「アセンダー」と「ディセンダー」の高さの合計は1,000になるようにしなければならないのです。

 

Glyphs Miniの画面。グリフのマスの高さは1,000ユニット(UPM)です。
元AIデータの高さ1,000ポイントは、これに合わせています。

Glyphs Mini画面

次は「キャップハイト」「xハイト」の設定ですが、続きは次回。

 

まとめ

・小文字のデザインでは「キャップハイト」「xハイト」を厳密に設定
・Glyphs Miniの仕様では、1つのemスクエアの高さ=1,000ユニット(UPM)
・emスクエア(の高さ)=アセンダー+ディセンダー

ではまた!

こんにちは。ANGEL VIBESです。前回はアルファベット・フォントの大文字に加え小文字もデザインする際には、作業それぞれの段階で「エックスライン」を設定する必要がある、というところまでお話しました。では今回は、小文字のデザインについて、それぞれの段階での「エックスライン」の設定をふまえた説明をしていきたいと思います。私がデザインしたフリーフォント「Alfalfa」を例にしてみます。

「Alfalfa」というオリジナルフォントです

画像出典:「ANGEL VIBES」サイト

 

デザイン決め〜下描き

前回の説明ではHelveticaの例をお見せしました。例を参考に、エックスラインはだいたいこの位置で、グリフそれぞれの部分によっては高さを揃えれば良いんだな・・・ということをちょっと頭の片隅においていただければと思います。そうしてデザインしていれば、統一感は自然と出て来ますよ。

デザイン決めの段階では、注意するのはそれぐらいです。

デザインが決まったら下描きをしていきますが、これは以前にも説明したとおり、「下描き用紙」に下描きします。この下描きが次の作業で下絵となります(詳細は、「フォントの作り方(3)」で説明しています)。
なお「下描き用紙」は、ANGEL VIBES オリジナルのものもありますので、こちらからダウンロードして使っていただいて構いません。
下描きの仕方は以前説明したとおり、デザインしたラフを「下描き用紙」に書き写していけば良いのですが、小文字をデザインするなら、まずこの段階でエックスラインの設定が必要となります。この段階でエックスラインの位置を決めてしまい、エックスラインに高さを揃える箇所はしっかり揃えましょう。

「Alfalfa 」はこんな感じで下描きしました。

 

下描きでもエックスラインに揃えるべき箇所は揃えます。

 

次は下描きをスキャニングしAdobe Illustratorでトレース

下描きした後は、下描きした下絵をスキャニング→AIドキュメント「トレース用紙.ai」上に下絵を配置→トレースして保存、という手順となります。これは「フォントの作り方(4)」で説明したとおりです。
なお「トレース用紙.ai」は、ANGEL VIBES オリジナルのものもあります。というか、おそらくどこにも売っていないと思います。私的に使うのは無料なのでこちらからダウンロードして使っていただいて構いません。

 

「Alfalfa」はこんな感じでトレースしました。

「Alfalfa」大文字
「Alfalfa」小文字

 

Glyphs Miniを使った作業の流れ

ここからは、トレースしたAIデータを一つ一つコピー&ペーストして拡大→グリフ一つ一つをAIデータとして保存→フォント作成ソフトに読み込ませる、という作業の流れです。「Alfalfa」はGlyphs Miniで作成しましたので、Glyphs Miniを使った作業の流れを説明します。

「フォントの作り方(10)」で説明していますが、次は、「トレース用紙.ai」ドキュメント上でトレースしたグリフ一つ一つに四角い囲みを印としてつけ、そのグリフを印と一緒に1,000×1,000ポイントのドキュメントの「元AI用紙.ai」に、コピー&ペーストして拡大し、グリフ一つ一つをAI形式で保存します。保存の際は別名保存し、「元AI用紙.ai」の名前ではなく、グリフ名をつけて保存してください。
こうして、「元AI」のフォルダに「A.ai」、「B.ai」、「C.ai」、・・・とグリフ一つ一つのAIデータが揃うことになります。なお、このグリフ一つ一つのデータは、「元AI」と呼んでおきましょう。

ここまでは「フォントの作り方(10)」で説明したとおりです。ただ、小文字もデザインする時は、「元AI用紙.ai」でエックスラインを設定することになります。

「Alfalfa」の例で説明すると、「トレース用紙.ai」上では、ベースラインからエックスラインまでの高さは37mm(エックスハイト)に設定しました。グリフそれぞれのエックスラインに合わせるべき箇所はその高さに合わせています。
そして、四角い囲みの印は「トレース用紙.ai」上のグリフでは75×75mm(「Alfalfa」では75mmの正方形にしましたが、だいたいそれくらいの大きさということで、厳密に75mmでなければならないということではありません)に設定しています。
次の作業では、この印とトレースしたグリフを一緒に「元AI用紙.ai」にペーストしますが、小文字をデザインする場合は、「元AI用紙.ai」にキャップライン、エックスライン、ベースラインをガイドラインとして描いておきます。
75mmを1,000ポイントに拡大する前提で比率を合わせれば良いわけだから、「トレース用紙.ai」上でのキャップハイトは50mmなので、「元AI用紙.ai」上では666.665ポイント(約666ポイント)となります。そして、エックスハイトは37mmなので、同比率で拡大すると493.355ポイント(約493ポイント)となります。
ペーストしたら、印の四角形(75×75mm)とグリフを一緒に拡大し1,000×1,000ポイントのドキュメントの四隅に合わせます。比率の計算が間違ってなければ、それぞれ、キャップライン、エックスライン、ベースライン、に重なるべき箇所は、ピッタリ重なるはずです。

 

「トレース用紙.ai」上のグリフは「Alfarfa」ではこんな感じで囲みの印をつけました

 

「元AI用紙.ai」上にペーストして拡大するとこんな感じ

 

「元AI用紙.ai」にキャップライン、エックスライン、ベースライン、をガイドラインとして描いておくのは少々面倒かもしれませんが、これを行っておけば、次の作業でGlyphs MiniにAIデータを読み込ませる時にスムースです。
その理由については、また次回。

 

まとめ

・小文字もデザインするなら、図案を決めるときにエックスラインを意識する
・下描き〜トレースの段階ではエックスラインを決めて作業
・「元AI用紙.ai」にはキャップライン、エックスライン、ベースラインをガイドラインとして描いておく

では、また!

こんにちは。ANGEL VIBESです。フォント作成ソフトを使ったアルファベット・フォントのデザインについて、説明した回もありますが、流れはだいたい解りましたか? 慣れるまでは無理せず、大文字だけデザインしてみても良いと思いますが、今日は、そろそろ小文字も一緒にデザインしてみたいという方に向けたお話をしようと思います。

 

「欧文書体設計のためのライン」をおさらい

「フォントの作り方(13)」でも説明しましたが、フォントの世界には、従来から「欧文書体設計のためのライン」があり、これがフォントのデザインやレタリングを行う上でのガイドラインとなっていました。デジタルによるフォントのデザインが始まる以前から用いられてきたわけで、これは今日のフォント作成ソフトの「メトリクス情報」のルーツとなってもいます。
今回は大文字だけでなく小文字もデザインするということなので、「欧文書体設計のためのライン」について振り返っておきましょう。大文字だけなら、「アセンダーライン」「ベースライン」「ディセンダーライン」ぐらいを覚えておけば良いですが、小文字をデザインするために「エックスライン」をチェックしておきたいのです。

 

従来の「欧文書体設計のためのライン」


再度、掲載しましたよ。図を見ると解るかもしれないですが、アルファベット・フォントの小文字をデザインする際には、「アセンダーライン」「ベースライン」「ディセンダーライン」に加え、「エックスライン」が重要なラインとなります。小文字の「g」の上端に接するラインとなっていたりするこの「エックスライン」ですが、グリフの部分によってはこのラインに高さを揃えた方が、フォント全体として見た時に統一感が出ます。

 

Helveticaの小文字を当てはめてみると・・・

アルファベット・フォントの小文字において「エックスライン」がどう介在しているのか、おそらく見てただいた方が早いかと思います。Helveticaの小文字を例に、「欧文書体設計のためのライン」にあてはめてみました。

Helveticaの小文字

およそこんな構造になっているんだな・・・という認識があれば、デザインもいやすいと思います。こことここの高さを揃えると統一感が出るんだな、という部分は覚えておきましょう。

 

小文字を含めたアルファベット・フォントのデザインの流れ

小文字を含めたアルファベット・フォントの実際のデザインの流れですが、それは今までの「フォントの作り方」で説明してきたとおりです。大文字だけのフォントをデザインする時も小文字も含めてデザインする時も、流れは変わりません。

オリジナルフォントを作成する手順をまとめると、
1. 図案を決め、紙に下書き
2. 下描きした図案をスキャンしトレースし、AIファイルで保存
3. AIファイルをフォント作成ソフトに読み込ませフォントデータ化
というものでした。

流れについては、
フォントの作り方(3)〜Fontographerの使い方(前編)〜
フォントの作り方(4)〜Fontographerの使い方(中編)〜
でも解説しています。

 

ただ、小文字デザインの設定が必要

上に説明したとおり、アルファベット・フォントのデザインは、大文字だけの時も小文字も含めての時も、その流れは変わりません。ただ、作業それぞれの段階で、「エックスライン」を設定する必要がります。
まず、図案を決め、下書きをする段階で、エックスラインを設定します。この設定によりエックスハイトも決まるので、トレースしてAIファイルを作成する際にも、フォント作成ソフトに読み込ませる際にも、エックスハイトを反映することとなります。
詳細は次回。

 

まとめ

・アルファベット小文字デザインには「エックスライン」が不可欠
・大文字だけの時も小文字を含めての時も、アルファベット・フォントのデザインの流れは変わらない
・小文字をデザインするなら、作業それぞれの段階で「エックスライン」を設定すべし

ではまた!

こんにちは。ANGEL VIBESです。このあたりで、フォント作成ソフトを使う際の「メトリクス」のことについて解説しておこうかと思います。実は、従来からあるレタリングなどにおいての尺度についての呼び名と、フォントデザインソフトにおいての尺度についての呼び名は、同じ名前を用いられながら厳密には意味が異なる場合があります。フォントやタイポグラフィの知識が少しでもある方は、ソフトを使ってフォントをデザインした時に混乱してしまったのではないでしょうか。
もしそんなことになってしまっていたら、基礎知識として読み返してみてください。

 

メトリクスとは?

辞書にも載っていますが、「メトリクス」とは要するに尺度や測定情報のことです。フォントをデザインするには、アセンダーライン、ベースライン、ディセンダーラインなど、一定のフォーマットに落とし込むための設計用のラインが必要です。そして、そのラインとラインの間には「アセンダー」や「ディセンダー」のようにそれぞれの箇所に名前がついています。フォントデザインの過程では、そういったそれぞれの箇所の寸法を測定することも必要な作業です。
アセンダーやディセンダーの測定はFontographerやGlyphs Miniの解説の際にも出てきましたね。こうした測定情報について、Fontographerでは「メトリクス情報」としてまとめられ、数値を入力して設定できるようになっていました。

 

尺度の名前は場面によって指す箇所が異なる

フォント作成ソフトのこうした「メトリクス情報」についてですが、フォントやタイポグラフィの知識が少しでもある方なら、既に少しばかり違和感があるのではないでしょうか? そのモヤモヤを、ちょっと解説しておきます。

従来のフォントデザインで用いられてきたそれぞれの名前に対応する測定箇所は、フォント作成ソフトにおいての箇所とは異なる場合があります。例えば「アセンダー」がそうですが、レタリングなどにおいての「アセンダー」とFontographerやGlyphs Miniにおいての「アセンダー」では、指している箇所が異なります。なぜそうなってしまったかは分かりませんが、アナログからデジタルにシフトする時には、何かしらの変容は起こり得ることです。
とりあえず言えることは、それぞれの名前に対応する測定箇所は、フォント作成ソフトでいうもの・従来のフォントデザインやタイポグラフィでいうもの、両者で異なっている場合があるので、別々のものとして考えた方が良いということです。

 

欧文書体設計のためのライン

従来の欧文書体設計のためのラインについて紹介しておきましょう。フォント作成ソフトのメトリクス情報のルーツは、それでもここから始まっていますので。
「欧文書体設計のためのライン」とは言いましたが、レタリングの古い教科書では「モデュールのためのライン」などとして紹介していたりもします。

 

従来の欧文書体設計のためのライン

 

Fontographerはこのような仕様でしたね。

Fontographer画面

お気づきかと思いますが、従来の欧文書体設計のためのラインとはアセンダーの位置が違います。

 

Gliphs Miniではこんな設定をしました。

Glyphs Mini画面

Glyphs Miniでも、emスクエアの高さであるユニット数は、アセンダーとディセンダーの合計となっていますね。

 

emスクエアの設定のズレ

 

Fontographer画面・ソフト付属のサンプルフォントの例

そして上は、Fontographer4.1Jに付属のサンプルフォントです。

このFontographer4.1J付属のサンプルフォントを見ると、アセンダーラインとディセンダーラインの位置がグリフのアウトラインから少し離れてます。従来の「欧文書体設計のためのライン」においては、グリフのアウトラインの天地は、アセンダーラインとディセンダーラインとに重なっていましたね。こうして見ると、両者でのアセンダーラインとディセンダーラインの位置もやや差があります。これは、emスクエアの設定も同一とはいえないということを示しています。
なお、タイポグラフィの古い教科書では、電算写植の文字は仮想ボディよりも「やや小さめに収まっている」という記述もあります。(「文字のデザイン」/馬場雄二・東京デザイナー学院出版局)
作り方によってはグリフのアウトラインの天地をアセンダーラインやディセンダーラインにぴったり重ねることも理論的には可能ですし、実際にそのように作られたフォントはあります。とはいえ、電算写植が流通しはじめた頃には、文字が仮想ボディよりも小さめにデザインされたものも開発されています。このようにデジタルフォントでは、文字をemスクエアのような仮想ボディの天地よりも内側にデザインするという設計も一つの流れとして存在しています。

 

emスクエアとはそもそも?

emスクエアとは、フォントをデザインする際の正方形の仮想ボディです。「em」は「エム」と読みます。ローマ字の「M」ですね。活版印刷の活字「M」のボディが正方形に近い形の金属の塊だったことに由来します。今では仮想ボディを意味して「emスクエア」と呼ばれることが多いです。
仮想ボディとは、フォントをデザインする時に「この四角い枠の中に収まるように設計しましょう」という約束事のラインと考えておけば良いでしょう。油絵などを描く時に四角いキャンバスがあるように、グリフ一つ一つにも四角形の枠がある、というようなことです。

 

まとめ

・「アセンダー」はレタリングの場合とFontographerなどの場合とでは、指している箇所が異なる
・「emスクエア」はレタリングの場合とFontographerなどの場合とでは、必ずしも同一の意味を示さない

ではまた!