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こんにちは。ANGEL VIBESです。このあたりで、フォント作成ソフトを使う際の「メトリクス」のことについて解説しておこうかと思います。実は、従来からあるレタリングなどにおいての尺度についての呼び名と、フォントデザインソフトにおいての尺度についての呼び名は、同じ名前を用いられながら厳密には意味が異なる場合があります。フォントやタイポグラフィの知識が少しでもある方は、ソフトを使ってフォントをデザインした時に混乱してしまったのではないでしょうか。
もしそんなことになってしまっていたら、基礎知識として読み返してみてください。

 

メトリクスとは?

辞書にも載っていますが、「メトリクス」とは要するに尺度や測定情報のことです。フォントをデザインするには、アセンダーライン、ベースライン、ディセンダーラインなど、一定のフォーマットに落とし込むための設計用のラインが必要です。そして、そのラインとラインの間には「アセンダー」や「ディセンダー」のようにそれぞれの箇所に名前がついています。フォントデザインの過程では、そういったそれぞれの箇所の寸法を測定することも必要な作業です。
アセンダーやディセンダーの測定はFontographerやGlyphs Miniの解説の際にも出てきましたね。こうした測定情報について、Fontographerでは「メトリクス情報」としてまとめられ、数値を入力して設定できるようになっていました。

 

尺度の名前は場面によって指す箇所が異なる

フォント作成ソフトのこうした「メトリクス情報」についてですが、フォントやタイポグラフィの知識が少しでもある方なら、既に少しばかり違和感があるのではないでしょうか? そのモヤモヤを、ちょっと解説しておきます。

従来のフォントデザインで用いられてきたそれぞれの名前に対応する測定箇所は、フォント作成ソフトにおいての箇所とは異なる場合があります。例えば「アセンダー」がそうですが、レタリングなどにおいての「アセンダー」とFontographerやGlyphs Miniにおいての「アセンダー」では、指している箇所が異なります。なぜそうなってしまったかは分かりませんが、アナログからデジタルにシフトする時には、何かしらの変容は起こり得ることです。
とりあえず言えることは、それぞれの名前に対応する測定箇所は、フォント作成ソフトでいうもの・従来のフォントデザインやタイポグラフィでいうもの、両者で異なっている場合があるので、別々のものとして考えた方が良いということです。

 

欧文書体設計のためのライン

従来の欧文書体設計のためのラインについて紹介しておきましょう。フォント作成ソフトのメトリクス情報のルーツは、それでもここから始まっていますので。
「欧文書体設計のためのライン」とは言いましたが、レタリングの古い教科書では「モデュールのためのライン」などとして紹介していたりもします。

 

従来の欧文書体設計のためのライン

 

Fontographerはこのような仕様でしたね。

Fontographer画面

お気づきかと思いますが、従来の欧文書体設計のためのラインとはアセンダーの位置が違います。

 

Gliphs Miniではこんな設定をしました。

Glyphs Mini画面

Glyphs Miniでも、emスクエアの高さであるユニット数は、アセンダーとディセンダーの合計となっていますね。

 

emスクエアの設定のズレ

 

Fontographer画面・ソフト付属のサンプルフォントの例

そして上は、Fontographer4.1Jに付属のサンプルフォントです。

このFontographer4.1J付属のサンプルフォントを見ると、アセンダーラインとディセンダーラインの位置がグリフのアウトラインから少し離れてます。従来の「欧文書体設計のためのライン」においては、グリフのアウトラインの天地は、アセンダーラインとディセンダーラインとに重なっていましたね。こうして見ると、両者でのアセンダーラインとディセンダーラインの位置もやや差があります。これは、emスクエアの設定も同一とはいえないということを示しています。
なお、タイポグラフィの古い教科書では、電算写植の文字は仮想ボディよりも「やや小さめに収まっている」という記述もあります。(「文字のデザイン」/馬場雄二・東京デザイナー学院出版局)
作り方によってはグリフのアウトラインの天地をアセンダーラインやディセンダーラインにぴったり重ねることも理論的には可能ですし、実際にそのように作られたフォントはあります。とはいえ、電算写植が流通しはじめた頃には、文字が仮想ボディよりも小さめにデザインされたものも開発されています。このようにデジタルフォントでは、文字をemスクエアのような仮想ボディの天地よりも内側にデザインするという設計も一つの流れとして存在しています。

 

emスクエアとはそもそも?

emスクエアとは、フォントをデザインする際の正方形の仮想ボディです。「em」は「エム」と読みます。ローマ字の「M」ですね。活版印刷の活字「M」のボディが正方形に近い形の金属の塊だったことに由来します。今では仮想ボディを意味して「emスクエア」と呼ばれることが多いです。
仮想ボディとは、フォントをデザインする時に「この四角い枠の中に収まるように設計しましょう」という約束事のラインと考えておけば良いでしょう。油絵などを描く時に四角いキャンバスがあるように、グリフ一つ一つにも四角形の枠がある、というようなことです。

 

まとめ

・「アセンダー」はレタリングの場合とFontographerなどの場合とでは、指している箇所が異なる
・「emスクエア」はレタリングの場合とFontographerなどの場合とでは、必ずしも同一の意味を示さない

ではまた!

2

こんにちは。ANGEL VIBESです。前回までの過程で、全てのグリフをGlyphs Miniに配置することができましたね。そこまでできたら、次はスペーシングとカーニングです。そして、フォントファイルを書き出したら完成となります! さあ、あとひとふんばりです。

 

[9]スペーシング

Glyphs Miniではスペーシングは1文字ずつ行います。グリフを並べて表示し、Adobeのドローソフト等で字詰めを行う感覚でスペーシングができます。
少し復習します。スペーシングとは、一つのグリフが占有する字幅の調整のことです。先ほど、グリフ一つ一つの字幅の設定をしましたね。これにより、グリフの四角いガイドラインの幅を調整できたと思います。実はこれが、一つのグリフが占有する字幅となります。
Glyphs Miniでは、こうした字幅は、文字のアウトラインの端からガイドラインの端までの距離の数値を入力することによっても、調整することができます。これは、字幅の設定を行ったのと同じ画面下のグレーのボックス、「左」「右」の数値部分に数値を入力することで行います。なお、「左」は文字のアウトライン左端からガイドラインの左端までの距離、「右」は文字のアウトライン右端からガイドラインの右端までの距離を示しています。

字幅の設定はグレーのボックス「左」「右」で調整することもできます。

Gliphs Mini画面

 

画面上部のツールボックスから「T」(テキストツール)を選びます。文字を打ってみましょう。すると画面上に文字が表示されます。この文字は並べてスペーシングを行うことができます。順番としては、まず平均的な字形を選び、それから○に近い字形を選び、そして「I」を選び、バランスを見ながらそれぞれのスペーシングを行っていきます。
見本のフォントDaisyの例では、文字の平均的なフォルムは四角形なので、四角いフォルムの「H」、「N」、「Z」から始めました。そして「O」、「I」と続け、バランスを見ながら調整していきました。

Glyphs Mini画面

 

Glyphs Miniではグリフ名を利用してスペーシングを行う便利な方法があります。基準にしたグリフ名を利用して他のグリフをスペーシングすることができます。例えば、「H」を基準にした場合、同一のスペーシングをしたいグリフを表示し「左」に「H」、「右」に「H」と入力すれば、「H」で設定した時と同一の数値が入力できます。
なお、その基準となるグリフの数値を変更したときは、ツールバー「グリフ」→「メトリクス情報を更新」を選びます。これを実行しないと、他のグリフにその変更した数値が反映されません。

「N」のスペーシングを「H」と同一にしました。

Glyphs Mini画面

こんな感じでグリフを表示し、調整していきます。

Glyphs Mini画面

全体を調整できたら、スペーシングは完成です。

 

[10]カーニング

カーニングもまた、スペーシングを行ったのと同じ、画面下のグレーのボックスで調整して行います。スペーシングの数値を入力する下の行です。
少し復習します。カーニングとはグリフとグリフの間隔の調整のことです。ある特定のグリフとグリフを並べた時の字詰めが美しくない場合に、グリフとグリフの間隔を詰めるなどの調整をします。それがカーニングです。
カーニングを設定するのは、気になるグリフだけでOKです。Daisyの例では、「OとV」、「OとW」、「OとY」、「Oと7」、「VとO」、「VとY」、「YとO」、「YとV」それぞれのペアについて行いました。
カーニングもスペーシングのように、基準にしたグリフ名を利用して他のグリフをカーニングすることができます。
実際に、「YとV」のペアと「YとW」のペアを同一のカーニングにした例です。
まず、「V」のカーニング「左K」には「-8」と入力し、「左G」の欄に「V」と入力しました。「左K」は字詰めをする数値で、「左G」はカーニンググループ名です。そして、同一のカーニングにしたい「W」の「左G」に「V」と入力することにより、「YとV」と「YとW」のカーニングを同一にすることができました。
右のカーニングも必要な箇所は、この方法で、「右K」に字詰めの数値、「右G」にグループ名を入力し、それぞれのグリフの間隔を調整します。行ったカーニングは、メニューバー「ウィンドウ」→「カーニング」で内容を表示させることも可能です。
なお、カーニングにおいてもスペーシングと同様に、基準となるグリフの数値を変更したときは、ツールバー「グリフ」→「メトリクス情報を更新」を選びます。これを実行しないと、他のグリフにその変更した数値が反映されません。

「YとV」のペアと「YとW」のペアを同一のカーニングにした例

Glyphs画面
Glyphs画面

 

[11]出力をしてフォントファイルを書き出し完成!!

スペーシングとカーニングはこれでOKです。それができたら、メニューバーから「ファイル」→「出力」を選び、ファイルを書き出します。これで、完成です。やりましたね!

 

まとめ

・スペーシングとカーニングは画面下のグレーのボックスで行う
・カーニングは気になるグリフのペアだけ行えば良い
・フォントファイルを書き出して完成

こんにちは。ANGEL VIBESです。前回はGlyphs Miniを立ち上げ、「フォント情報」を設定するところまでできましたね。今日は、「元AIデータ」を、Glyphs Miniに読み込ませる作業を中心に解説します。

 

[6]続いて「出力」の設定

Glyphs Miniを立ち上げ、「フォント情報」を設定したら、次に「出力」を設定します。メニューバーから「ファイル」→「出力」を選び「重なったパスを合体」がチェックされているかを確認します。デフォルトではチェックになっていますが、念のため確認しておきましょう。
これがチェックされていることにより、フォントファイルを書き出す際に、開いたパス・重なったパスやポイントを合体することができます。Fontographerの使い方でも説明しましたが、パス上の余分なポイントはなくし、開いているパスは繋ぎます。フォントファイルを作る時にはグリフのアウトラインは整理しなければなりませんでしたね。

Glyphs Mini画面

グリフ一つ一つの画面を開いて、「重なったパスを合体」を実行することもできます。重なったパスやポイントは、オレンジ色の●で示されます。メニューバーから「フィルター」→「重なったパスを合体」を選んでいただければ、合体が実行され、オレンジ色の●は消えます。
ただこのように一つ一つのグリフの画面でやらなくても、「出力」で「重なったパスを合体」をチェックしてさえいれば、フォントファイルを書き出す際に、一括して「重なったパスを合体」が実行されます。

Glyphs Mini画面

 

[7]グリフ一つ一つの画面に「元AIデータ」をペースト

各設定ができたら、最初の画面に戻ります。「A」、「B」、「C」、「D」・・・と続くマス目がありますね。このマス目を一つずつダブルクリックしグリフ画面を開きます。画面下のグレーのボックスで、「字幅」に「1000」と入力します。そうすると、グリフ画面の四角いガイドラインの幅が1,000ユニットになります。
この四角いガイドラインですが、高さはemスクエアの高さを示しています。すでに述べていますが、emスクエアの高さはGlyphs Miniではユニット数(UPM)で表されます。そして、Glyphs Miniの仕様ではemスクエアの高さ=ユニット数(UPM)は1,000となっています。なので字幅を「1000」と入力すると、1,000×1,000ユニットの正方形のガイドラインができますね。

次に、「元AIデータ」をGlyphs Miniに読み込ませる作業です。
「元AIデータ」をAdobeIllustratorで開き、位置合わせの印とグリフとを一緒にコピーし、
Glyphs Miniのグリフ画面にペーストします。そして、その1,000×1,000ユニットの正方形のガイドラインに位置を合わせます。
「元AIデータ」は1,000×1,000ポイント=1,000×1,000ユニットのドキュメントで作りましたので、位置合わせが正しく行われれば、グリフの画像はアセンダーライン・ディセンダーライン・ベースラインの正しい位置に収まります。
なお、ガイドラインに位置合わせ用の印の四角形がピッタリ重なれば、オレンジの◆が示されます。うまく重ならなければ、グリットが見えるまで拡大して、画像を重ねるようにしましょう。

マス目をダブルクリックしてグリフ画面を開きます

Glyphs Mini画面

下のグレーのボックスで「字幅」を設定します。

Glyphs Mini画面

ペーストした画像をガイドラインにピッタリ重ねるとオレンジの◆が示されます。
難しければ、グリッドが見えるまで拡大して重ねましょう。

Glyphs Mini画面

位置合わせはできましたか? これができたら位置合わせ用の四角形は不要になります。四角形のパスをダブルクリックして選択し、deleteキーで消去します。

 

[8]数字と役物を「グリフ情報」で追加

Gliphs Miniに「A」から「Z」までAIデータをペーストし、位置合わせをし終えましたか? それが終わったら、次に数字や約物の作業です。タブ「フォント」から「数字」「約物」を選び、マス目の画面を表示し、「A」から「Z」で行ったのと同じようにAIデータをコピー・ペーストしていきます。
でも、アレっ? 数字がない、約物がない! ってなりましたね? そうなんです。作成できるグリフは、デフォルトでは「A」から「Z」の大文字・小文字しか設定されていません。「フォント」タブからカテゴリーの「数字」を選び表示してみるとカラになっていて、グレー一色の画面になっています。数字と役物も作りたい場合は、メニューバーから「ウィンドウ」→「グリフ情報」を表示し、作りたいグリフを選択し右下の「フォントに追加」ボタンを押していきます。数字なら、「0」、「1」、「2」・・・と加えていきましょう。すると、加えたグリフのマス目ができあがります。
もう一度カテゴリー「数字」を開いて確認してみましょう。「0」から「9」のマス目ができあがってますね。マス目ができたら、また「A」から「Z」まで作業したのと同じように、AIデータをコピー・ペーストし、位置合わせをします。

「グリフ情報」からフォントを加えていきます。

Glyphs Mini画面

これが

Glyphs Mini画面

こうじゃ!

Glyphs Mini画面

全ての作りたいグリフのデータを、Gliphs Miniに読み込ませましたか? この作業ができたら、次はスペーシングとカーニングです。

 

まとめ

・「ファイル」→「出力」を選び「重なったパスを合体」をチェックすべし
・グリフのAIデータは位置合わせの印と一緒にGliphs Miniにコピー・ペーストする
・作成可能なグリフはデフォルトでは「A」〜「Z」の大文字・小文字のみに設定されている
・「A」〜「Z」以外の作りたいグリフは「グリフ情報」で追加

ではまた!

こんにちは。ANGEL VIBESです。前回は、「グリフ」の説明をしているうちに終わってしまいました。Glyphs Miniの使い方に話を戻しましょう。フォントのデザインを決めて下描き〜AdobeIllustratorでトレース、ここまではFontographerを使う時と同じでしたね。忘れた部分があったら、過去記事「フォントの作り方(3)」フォントの作り方(4)」を読んでみてくださいね。
さて、あなたの手元にはグリフをトレースしたAIデータ「トレース用紙.ai」が用意できていますか? 今日はここからのお話です。

 

[4]トレースしたAIデータを「元AI用紙」に1文字ずつ保存します

FontographerにAIデータを読み込ませるためには、トレースしたAIデータを「元AI用紙.ai」にコピー・ペーストしグリフ1文字ずつを保存した、「元AIデータ」を用意しなければなりませんでしたね。「元AI用紙.ai」には印がついており、この印によって、Fontographer上で全てのグリフのemスクエアの高さを統一することができました。

AI形式のドキュメント「元AI用紙」から作成した「元AIデータ」


Glyphs MiniでもFontographerの時と同様に、Giyphs Mini上にペーストされるグリフのemスクエアの高さは統一されなければなりません。その他Glyphs Miniでは、ペーストされるグリフは画面の正しい場所に位置合わせをされなければなりません。なので、Glyphs Miniの仕様に合わせた「元AI用紙.ai」が必要です。
なお、Glyphs Miniではemスクエアの高さには「ユニット(UPM)」という単位が割当てられています。Glyphs Miniの仕様では、1つのグリフのemスクエアの高さ=1,000ユニット(UPM)となっています。「ユニット(UPM)」という単位については、今はこのことだけ覚えておいていただければ良いでしょう。

Glyphs Miniの画面。グリフのマスの高さは1,000ユニット(UPM)です。

Glyphs Mini画面

では、AI形式のドキュメント「元AI用紙.ai」を使い、「元AIデータ」を作ります。
まず、「元AI用紙」の作り方です。1,000ユニット(UPM)はAdobeIllustrator上では1,000ポイントと同一の大きさです。なのでまず、1,000ポイントの高さのドキュメントを作ります。とりあえず1,000×1,000ポイントの正方形にしておきましょうか。そしてそのドキュメントに合わせ、1,000×1,000ポイントの正方形をラインで描いておきます。これは位置合わせ用の印なので、Glyphs Mini上で位置合わせをした後に消去します。これで「元AI用紙.ai」ができました。
次に、「トレース用紙.ai」上でトレースされたグリフ一つ一つを四角形のラインで囲み、印をつけます。emスクエアの高さが四角形の高さとなるように、一つ一つの四角形の位置と大きさを統一してください。
あとは、そのトレースしたグリフを四角形の印と一緒に「元AI用紙.ai」にコピー・ペーストし、高さが1,000ポイントになるよう拡大します。そして、1文字ずつAI形式で保存します。「元AI」などの名前のフォルダを作り、この中にそれぞれのグリフを「A.ai」「B.ai」「C.ai」・・・と保存していきましょう。

 

「トレース用紙.ai」のグリフ一つ一つに印として四角形の囲みをつけます。

 

「元AI用紙.ai」に、グリフを四角形の印と一緒にコピー・ペースト。
ペーストした画像は拡大し、4隅の位置を合わせます。

 

[5]Glyphs Miniを立ち上げたらまずは「フォント情報」の設定

さて、いよいよGlyphs Miniを使っての作業です。Glyphs Miniを立ち上げたら、メニューバーから「ファイル」→「新規」を選び新規のドキュメントを開きます。そして「ファイル」→「フォント情報」を選び各項目の設定をします。Fontographerを使用する場合も同じでしたね。新規のドキュメントを開いたら、まずは「フォント情報」の設定です。

「ファミリー名」の設定
フォントファミリーの名前を入力します。自由に名付けてください。次の項目「スタイル名」はデフォルトで「Regular」となっています。フォントファミリーを増やさないなら、「スタイル名」はデフォルトの「Regular」のままでOKです。

クレジット関連情報の設定
クレジット関連では「デザイナー」「デザイナーのURL」「製造者」「製造者のURL」「著作権」があります。デフォルトでは空欄になっていますので、各項目に入力しましょう。

「バージョン」の設定
デフォルトでは「1.000」となっています。そのままで大丈夫です。フォントをリ・デザインするなどした時はバージョンアップすると良いでしょう。

メトリクス関連情報の設定
「ユニット数(UPM)」「アセンダー」「キャップハイト」「xハイト」「ディセンダー」「イタリック角度」の設定です。
「ユニット数(UPM)」はデフォルトのまま「1000」でOKです。既に説明しましたが、Glyphs Miniでは一つのグリフのユニット数は仕様で1,000となっているので、よほど理由でもない限り、1,000のままで大丈夫です。
「アセンダー」と「ディセンダー」ですが、「元AIデータ」を見れば簡単ですね。ドキュメントサイズを1,000ユニット=1,000ポイントに設定してあるので、そのまま「アセンダー」と「ディセンダー」の高さを測って入力しましょう。AIドキュメント上で端数が出ていたら、切り捨てるなどして調整しましょう。ただし、「アセンダー」と「ディセンダー」の高さの合計は1,000になるようにします。

過去記事「フォントの作り方(5)」を復習しますね。

emスクエア(の高さ)=アセンダー+ディセンダー

これだけは覚えておきましょう。

「キャップハイト」「xハイト」「イタリック角度」はデフォルトのままで差し支えありません。
ここまで入力できたら「アラインメントゾーン」の矢印ボタン(赤いマイナスボタンの右隣の黒いボタン)を押します。こうすることで、位置とサイズが自動計算されます。

Daisyはこんな感じで設定しました。

Glyphs画面

これで「フォント情報」は設定できました。続きはまた次回。

 

まとめ

・Glyphs Miniの仕様では、1つのemスクエアの高さ=1,000ユニット(UPM)
・AdobeIllustrator上では、1,000ユニット(UPM)=1,000ポイント
・emスクエア(の高さ)=アセンダー+ディセンダー
・Glyphs Miniを立ち上げたら「フォント情報」で必要事項を入力する

ではまた!

こんにちは。ANGELVIBESです。今日はGlyphs Miniを使ったオリジナルフォントの作り方のお話です。前回のおさらいをちょっとしますね。
Glyphs Miniには日本語版があり、しかも価格が5,000円程度。なのに基本的な機能はそろっている。なので、フォントデザインビギナーさんにはGlyphs Miniが一推し! というお話をいたしました。
というわけで、今日からGlyphs Miniの使い方編をスタートしたいと思います。見本のフォントはFontographerの解説の時に使用したDaisyです。同じフォントにしておいた方が、混乱はしないかと思いますので。

今回もDaisyを見本にします

画像出典:「ANGEL VIBES」サイト(http://www.auracommunications.com/angel/frfnt/daisy.html)

 

フォント作成の手順はFontographerと基本的に一緒でOK

Glyphs Miniを使ったフォントデザインの基本的な手順は、Fontographerと同様です。ただ、やはりGlyphs MiniとFontographerは別のソフトなので、ソフトの細かい部分での使用方法や設定方法は異なります。でも、使ってみると共通項があるということは発見できるかと思います。
Glyphs Miniを使う場合も、Fontographerを使う場合とおおまかな手順は変わりはありません。したがって、Glyphs Miniの場合も、次のような手順となります。

1. 図案を決めます。
紙に手書きでラフデザインを描きます。デザインがまとまったら、下描き用紙に書き写します。
復習します。「下描き用紙」って何でしたっけ? 専用の方眼紙でしたね。ANGEL VIBESオリジナルの用紙を使っていただいてもOKです。→無料ダウンロードはこちら☆

2. 下描きした図案をスキャンしトレースします。
下描きした図案をスキャナーでスキャンします。これを下絵にしてAdobeIllustratorでトレースします。トレースした画像はAIファイルで保存します。文字のベースはこれで完成です。

3. AIファイルをGlyphs Miniに読み込ませフォントデータ化します。
AdobeIllustratorで作成した文字のベースとなるAIファイルを、Glyphs Miniに読み込ませます。AdobeIllustrator上で画像をコピーし、Glyphs Miniの所定のマス目に1画像ずつペーストしていくイメージです。ペーストができたらカーニング設定等の行程を経て、フォントデータを書き出し完成します。

このように、手順はFontographerとおよそ変わりません。特に手順「2」の途中までは同じです。Glyphs Miniを使用する場合でも、ラフデザインを下描き用紙に書き写し、この下描き用紙をスキャンしてAdobeIllustratorでトレースするところまでは同じです(「フォントの作り方(3)」「フォントの作り方(4)」)。

過去の記事「フォントの作り方(3)〜(4)」でいうと、
[1]下描き用紙に図案を描く
[2]スキャナーで下絵をスキャンし一文字ずつ切り分ける
[3]AI形式のトレース用紙を使いAdobeIllustratorで1文字ずつトレースします

というところまでは同じなので、説明は省きます(ちょっと忘れちゃったなあということでしたら、戻って復習してみましょう)。この後から、少しずつ異なる手順があります。では次の手順を[4]として、そこから説明をします。

 

下描き用紙に図案を描いて、スキャナーでスキャンします。

 

スキャンしたデータを切り分け、
AIドキュメントの「トレース用紙」に1文字ずつ配置し下絵にします。

 

下絵を元にトレース。ここまでは同じ。

 

「グリフ」とは?

いきなりで恐縮しますが、[4]の説明に入る前に「グリフ」とは何か? というお話です。ちらりちらりと「グリフ」という単語が出てきていますが、重要な用語の一つなので念のため説明しておきますね。
「Weblio 辞書 」→「.NET Framework用語集」の「グリフ」の項目を見てみましょうか。
「グリフ」とは「特定のフォントにおける文字の物理表現。」と記されています。「グリフ」という単語は使用する場によって意味が多少異なり、定義が定まっていない印象も受けますが、コンピュータの用語、特にフォントと対峙する概念として考えた時、次のような意味となります。「グリフ」とは個々の字形。付け加えると「フォント」はその集合、という意味になります。Gliphs Miniでいえば、画面にA、B、C・・・と続く一つ一つの文字の形ですね。

画面にグリフが並んでいますね

Glyphs Mini画面

いきなり「グリフ」の説明が入ってしまいましたが、次回は、トレース用紙でトレースしたデータを使った次の過程についての解説です。

 

まとめ

・Glyphs Miniを使ったフォント作成の基本的な手順は、Fontographerと共通点が多い
・下絵をトレースするところまでの手順はFontographerの時と同様
・「グリフ」とは、特定のフォントにおける個々の文字の字形

ではまた!

こんにちは。確定申告を終えてホッとしているANGEL VIBESです。ところでFontogrpherは入手できましたか? すでに述べていますが、FontLab社の公式サイトで購入はできますが、日本語版の販売は終了しています(日本では恒陽社がFontLab社の代理店となり、日本語版を販売していました)。・・・う〜んやはり、日本語版が欲しい方もいらっしゃいますよね。
なんてことを考えると、オリジナルフォントデザインのビギナーさんにフォント作成ソフトをオススメするというなら、確かにGlyphsは一推しなんですよ。日本語版がありますし、それでいて多機能で柔軟性があり、優れたソフトだと思います。そしてGlyphs Miniなら5,000円程度でフォント作成ソフトとしては低価格。Glyphsよりも機能が少ないながらもこちらも超オススメ!
というわけで、フォント作成ソフトを新しく導入したい方で特にフォントデザインビギナーの方のために、今日はGlyphsについてお話しようと思います。

 

Glyphsの歴史

Glyphsといったら、発売された当初から評判が良かったという印象です。日本では、既に2012年ぐらいにはネットでちょっとした騒ぎになっていました。フォントクリエイター達はWebを通し、口々に使いやすいと伝えていました。
そうしたメディアによれば、Glyphsの日本語版は2013年頃にリリースされたようです。ヤマダコウスケさんの「フォントブログ」にも解説があります。

さて、Glyphsっていつからあったの? ということについてです。Glyphsの前身となるソフトがあったのかどうかは調べかねてますが、Glyphs公式ハンドブックでの著作権表示が2011年からになっているので、「Glyphs」としての歴史は、2011年から始まっていると考えて差し支えないでしょう。とすると、Glyphsはかなり早い段階で、日本語版がリリースされたフォント作成ソフトだと言えるのではないでしょうか。

 

Glyphsの使いごこちは?

Glyphsの使いごこちは、一言で言うと、柔軟。「そこ! そこが気になってたの!」という部分の細かな設定が、かなり簡単に出来てしまう。例としてはグリフ一つ一つの幅設定。グリフのマスの幅のみならず、文字の左右にどれぐらいのスペースがあるかも数字で示され、画面で確認できます。私にはこれがインパクト大でした。それから、画面上のドローツールが感覚的で、デザイナーが使うにはラクだと思いました。慣れれば、AdobeIllustratorを使わずにダイレクトにGlyphs上で下絵をトレースする手順の方が、やりやすいかもしれません。とは言え、AdobeIllustratorのAIデータをコピー・ペーストする方法も可能なので、これも好きずきで選べば良いでしょう。
それから、リガチャーがずいぶん綿密に設定できるというのも良いです。デザインによってはリガチャーが細かに設定できればいいんだけどなあという場合もあります。リガチャーが綿密に設定できることによって、場合によってはデザインの可能性も広がるのではないかと思います。

こんな感じでドローができます

Glyphs画面

グリフのマス一つ一つの幅は数字を入力することで設定できます

Glyphs画面

 

ビギナーにも親切

GlyphsにはTrial版(体験版)があって30日間無料で使用でき、Glyphs公式サイトから入手できます。しかも、日本語版があります。フォント作成ソフト自体が、一体どんな使い勝手で見当もつかないというフォントデザインビギナーの方なら、助かるのではないでしょうか? そして、Glyphs最新版(バージョン2.3)のハンドブックは日本語版も用意されています。これなら、充分検討してから購入するかどうか決められますね。
それから、ビギナーにとってもう一つ嬉しいのは、公式サイトのトレーニングビデオです。全部見れば、Glyphsの使い方は、ひととおり知ることができます。

Trial版(体験版)は公式サイトからダウンロードできます

画像出典:Glyphs公式サイト

トレーニングビデオもありがたいです

画像出典:Glyphs公式サイト

 

まずGlyphs Miniを試すという手もある

Glyphsについて少しばかりご案内してきましたが、いかがでしたか? GliphsとGliphs Miniのお話を一緒に進めてきてしまいましたが、オリジナルフォントデザインをこれから始めようという方が新しくフォント作成ソフトを導入したいということなら、私はMiniの方をオススメします。
リガチャーなどの細かな設定ができることから察するに、Gliphs自体がプロからセミプロ向けのソフトと考えられます。細かな設定ができることはプロも嬉しいですが、ビギナーさんであればその細かさに少々混乱するかもしれません。それよりは、基本的な機能だけは搭載しているGliphs Miniでひととおり慣れていただいて、それからGliphsを導入するということでも遅くないと思います。何よりGliphs Miniの価格ですよ。5,000円程度で、あれだけの機能。損にはならないと思います。また、使用していただいて、もしMiniの方で充分だということなら、あえてGliphsは導入せずMiniを使い続けるという選択もアリだと思います。

さて次回から、Gliphs Miniを使ったオリジナルフォントの作り方についてお話したいと思います。

 

まとめ

・Glyphsは、正直言うと推しです。
・Glyphsには日本語版がある。
・Gliphs Miniの価格は5,000円で低価格。それでいて基本的な機能は備えている。
・ビギナーさんにはGliphs Miniがオススメ。

ではまた!

 

こんにちは。ANGEL VIBESです。ところで、Fontographerの日本語版が欲しいという方もいらっしゃいますよね? でも、既にお話しているとおり、Fontographerの日本語版は販売終了しており、日本語版の製造は現在は行われておりません。ただし、英語版はFontLab社の公式サイトから購入できます。
英語版なら購入可能、とはいえ、日本でも人気があったフォント作成ソフトが何でこんなことに? という方もいらっしゃるかと思うので、ちょっとだけ経緯をお話しておきましょう。

 

Fontographerのメーカーや販売企業の変遷

Fontographerは今はなきAltsys社で開発されたソフトです。Altsys社といえば、かつてクリエイター向けのソフトをいろいろと開発した企業で、FreeHandの開発もAltsys社。FreeHand、今の若手デザイナーだと知らないかな? まあ、知らなくてもおかしくないです。FreeHandはDTPの黎明期の頃には、AdobeIllustratorと肩を並べたドロー系のソフトだったのですよ。
このAltsys社は1995年にMacromedia社に買収され、そしてMacromedia社は2005年にアドビシステムズに買収されました。Macromedia社といえば、今でもユーザーが多いAdobeDreamweaverは、もともとはMacromedia社からリリースされたソフトです。Flashも今やAdobeのソフトですが、これももともとはMacromedia社からリリースされたソフトです。
Macromedia社がアドビシステムズに買収された同じく2005年、FontLab社はMacromedia社からFontographerについての一部のライセンスを獲得しました。そして現在では、FontLab社がFontographerのライセンスを完全に獲得するにいたり、Fontographerの開発も販売もFontLab社が行っております。

私が持っている「Fontographer 4.1J」。クラシック環境でしか動きません。
クレジットがまだMacromedia社です。

※登録ユーザの部分はシリアルなどが入るので画像処理をして消しました

懐かしのクラシック環境の画面。

 

そして日本の販売代理店の変遷

Fontographerを巡っては、上に述べたようなメーカーや販売企業の変遷という背景がありました。こうした中で、日本語版は日本の企業が日本国内向けのFontographerの販売代理店となりました。これにも変遷がありました。
Macromedia社が買収されてから、恒陽社がFontLab社の代理店となって販売をしていたものの(「恒陽社、フォント作成ソフト『Fontographer』の国内販売を開始」/2006年6月26日 ASCII.jp)、それも「Fontographer 5J for Mac OS X」発売時には加賀電子株式会社が国内販売代理店となっています(「加賀電子、フォント作成ソフトウェアの最新版「Fontographer 5J for Mac OS X」」/2011年11月22日 MdN Design Interactive)。そしてその後数年で、加賀電子でも販売を終了することになりました。

私がFontographerを初めて購入したのはバージョン4.1の時でしたが、「Fontographer 4.1J」を購入したのは、恒陽社のネットショップ、確か「KG ダイレクト」というショップだったと記憶しております。なので、バージョン5を購入する際、販売元が「加賀電子」になっていて、いつの間に? と思いました。それから、Fontographerの公式サイトから日本語ページが消えたのも発見し、どうしたのだろう・・・など思っていたら、日本語版の販売自体がいつしか終了していました。

こちらは私が所有する「Fontographer 5 J」。バージョン4.1を持っていたので、アップグレード版を購入しました。

 

やはり、少し寂しい・・・

以上が、Fontographerを巡ってのおよそのアウトラインです。日本語版が販売終了してしまったのは、正直なところ寂しいです。でも、メーカー・販売元の変遷につぐ変遷があり、その中で日本語版の開発を保持し、代理店と契約して販売するというのは、なかなか大変なことなのかなあというのが、私の感想です。
とはいえ、念のため言っておきますよ。今後、バージョンアップされた状態で日本語版をリリースするというなら、私は買いますよ☆

・・・とか何とかお話してきたFontographerですが、FontLab社で元気に生きているようですね。

 

まとめ

Fontographerにはメーカーや販売企業の変遷という複雑な背景がある。
今のところ、日本語版は販売終了している。
 

こんにちは。ANGEL VIBESです。さて、いよいよです。Fontographerを使ったオリジナルフォント作りは、今日のプロセスで完成です。

 

[7]emスクエアの印を消し1文字ずつデータを整理する

ここからの作業は、Fontographerのドキュメントのマス目1文字ずつをダブルクリックし、別ウィンドウを開いて行います。別ウィンドウは1文字ずつ拡大された状態で表示されます。

別ウィンドウを開いた状態で、3つのやるべきことがあります。

1つ目。不要になったemスクエアの高さを示す印を消去します。
2つ目。ポイントの重なり部分を削除します。
3つ目。開いたパスがある部分は修正します。

この3つのプロセスについて、少し解説します。

不要になったemスクエアの印を消去
マス目をダブルクリックし、別ウィンドウを開いて1文字ずつ作業します。ツールボックスの「選択」ツールで上下にある印を選択し消去します(キーボードの「delete」キーで消去)。emスクエアを読み込ませるための印は、もう必要ないからです。

emスクエアの印を消去します

 
作業をしやすくするため「ポイントの表示」を設定する
ポイントの重なり部分の削除、開いたパスがある部分の修正、次のこの2つの作業をするために、まず、このような問題があるポイントが発見しやすくなるように設定をします。
メニューバーから「Fontographer」→「環境設定」を選び、「ポイント表示」の項目「ハイライト」を確認します。「重なっている隣接ポイントをハイライト」をチェックします。こうすることで、ポイントの重なり部分が二重丸で示されるようになります。
そして同時に「閉じていないパスの両端をハイライト」をチェックします。こうすることで、パスが閉じていないポイントが丸で囲まれて示されるようになります。

ポイント表示画面を確認

 

ポイントの重なり部分を削除
Fontographerの「ポイント」は、AdobeIllustratorでいう「アンカーポイント」とおよそ同義です。そして通常、そうしたポイントが同じ場所に重なっている状態を指して「ポイントが重なる」(オーバーラップ)と表現しています。不要なポイントは削除した方が整理されたデータになるので、そうした不要なポイントを削除しようというわけです。
そうした不要なポイントを削除するには、二重丸で示された部分をツールボックスの「選択」ツールで選び、メニューバーから「エレメント」→「オーバーラップ削除」を選択します。これでポイントの不要な重なり(オーバーラップ)が削除されます。コマンドを用い、「コマンド+shift+O」としていただいても削除が可能です。

ポイントが重なっている部分は二重丸で表示されます。

 

開いたパスがある部分の修正
AIデータで開いたパスがあるままFontographer上にペーストすると、Fontographer上でもパスが開いたままの状態となります。AdobeIllustretorでパスをつなぐ修正をして、もう一度Fontographer上にペーストしましょう。

パスが開いている場所は丸で囲まれて表示されます

 

フォントのデータは整いましたか? 次は文字と文字の間隔に関する設定をします。

 

[8]スペーシングとカーニング

文字と文字の間隔に関する設定は、スペーシングとカーニングによって行います。スペーシングは、(文字のまわりの部分を含めた)1文字が占有する幅の設定ことで、カーニングは文字と文字との間隔の設定のことです。細かく設定することもできますが、追求し出すと迷宮にはまっていくことがある作業です。慣れるまでは「自動」の設定で充分でしょう。
自動でスペーシングとカーニングを行うには、メニューバーから「メトリクス」→「メトリクス設定」を選びます。そして「左サイドベアリング」をチェックし、「処理方法」項目で「これと同じに設定」をチェックし、ボックスは「文字」を選び、その右の数値は0にします。

「メトリクス設定」画面

そしてドFontographerのキュメントのすべてを選択(コマンドA)します。マス目のペーストされている文字がある箇所が選択された状態になっていることを確認し、「メトリクス」→「グリフ幅設定」を選び、「設定」に400と入力しておきます。

以上の設定ができたら、まずスペーシングを行います。
メニューバーから「メトリクス」→「自動スペーシング」を選び数値を入力します。私がデザインした参考のフォント「Daisy」では150に設定しました。
それができたら、次はカーニングを行います。

「自動スペーシング」画面

メニューバーから「メトリクス」→「自動カーニング」を選び、「作成するカーニングペア数」の項目は「できるだけ多く」をチェックし、「カーニング量」に数値を入力します。そして「既存のカーニングペアを変更」をチェックします。「Daisy」では「カーニング量」の数値は160に設定しました。
カーニングがちょうど良くならず修正する場合は、メニューバー「メトリクス」→「カーニング消去」で設定を消去してから再び「自動スペーシング」、次に「自動カーニング」の順に設定し直します。

「自動カーニング」画面

 

[9]フォントファイルの書き出し

いよいよ最終プロセスです。フォントファイルを書き出してみましょう。
今回はMacでもWindowsでも使えるクロスプラットフォームのOpenTypeの形式で、書き出してみます。メニューバーから「ファイル」→「フォントファイル作成」を選びます。「作成モード」は「詳細」を選びます。
「アウトラインフォント設定」の項目、「プラットフォーム」は「クロスプラットフォーム」を選択、「フォントフォーマット」は「OpenType PS(.otf)」を選択します。「フォーマットオプション」は「OpenTypeレイアウトのコードを生成しない」をチェック、「OpenType PS(.otf)」項目の「サブルーチンを圧縮」をチェックします。「グリフ名」は「PDF互換のグリフ名を適用」を選びます。そして「作成」ボタンを押せばフォントファイルが書き出されます。

やりました! 完成です!

「フォントファイル作成」画面

 
いかがでしたか? はじめは少し戸惑うかもしれませんが、Fontographerは覚えてしまえばそれほど難しくありません。スペーシングやカーニングも最初のうちは自動で作成してしまえばOKです。それほど難しく考えず、とにかく手を動かしてみることです。
ソフトの使い方は確かに大事ですが、何よりデザインのアイディアが大事です。まずは肩の力を抜いて、楽しみながらあれやこれやとラフデザインを描いてみてください。
Fontographerの日本語版は販売終了してしまいましたね。。。私も将来的には他のソフトに乗り換えるかもしれませんが、なんだか愛着があるんですよね。だからといって、愛着があるという理由だけで、皆さんにFontographerをオススメしているわけではありません。最初にお話したとおり、Fontographerにはオリジナルフォントを作成するための基本がつまっています。だからこそ、基本のフォント作成ソフトとしてオススメするのです。

F o n t o g r a p h e r は い い ぞ

 

まとめ

フォントデータの整理の3ステップ
・不要になったemスクエアの高さを示す印の消去。
・ポイントの重なり部分(オーバーラップ)の削除。
・開いたパスがある部分の修正。

そして
スペーシング・カーニングを行う。自動でもOK。

フォントファイルを書き出して出来あがり!

 

こんにちは。ANGEL VIBESです。今日はいよいよFontographerの使い方のお話です。前回までのプロセスで、Fontographerに読み込ませるためのAIデータ作成までたどりつきましたね! あともうひとふんばりです。
Fontographerは公式サイト(旧サイト)に体験版(試用版)があります。もしFontographerをお持ちではなく試しに使ってみたいという方は、体験版を使ってみるのもありですね。→ダウンロードはこちら☆
今回は、私が持っているFontographerが5.1Jなので、このバージョンでのお話をします。

「Fontographer 5.2 for Mac OS X demo」 は
Fontographerの公式サイト(旧サイト)でダウンロードできます。

「Fontographer 5.2」体験版の画面

 

[5]Fontographerを立ち上げたらまずは「フォント情報」の設定

Fontographerを立ち上げましたか? そうしたらメニューバーから「ファイル」→「新規フォント」を選び新規のドキュメントを開きます。そして「エレメント」→「フォント情報」を選び各項目の設定をします。

「名前」の設定
「フォントファミリー名」にフォントの名前を入力します。素敵な名前、中二病のような名前、自由に名づけましょう。「フォントファミリー名」を入力すれば、「フォントグループ名」等、自動的に入力されます。ウエイトを変えてフォントファミリーを作るのでなければ、ウエイトはデフォルトの「Regular」、傾きも同様にデフォルトの「Plain」でOK。

「フォント情報」画面

「メトリクス」の設定
「メトリクス」の設定をするには多少の計算が必要です。ここでは、「emスクエア」の高さを1000とした時の、その中に占める「アセンダーライン」から「ベースライン」までの高さ、そして「ベースライン」から「ディセンダーライン」までの高さの比率を計算します。この「アセンダーライン」から「ベースライン」までの高さは「アセンダー」、「ベースライン」から「ディセンダーライン」までの高さは「ディセンダー」のといいます。
「元AI用紙」では、上下の印がついていましたね。実は、この上下の印までをあわせた高さが「emスクエア」の高さです。これを100%として、そこに占める「アセンダー」「ディセンダー」の比率を計算するというわけです。
参考のフォント「Daisy」は、emスクエアの高さは78mm、「アセンダー」の高さは64mm、「ディセンダー」の高さは14mmです。なので「emスクエア」の高さを1000とした場合、「アセンダー」の高さはおよそ820、「ディセンダー」の高さはおよそ180という比率になります。「メトリクス」画面では「すべての値を自動計算」のチェックを外し、「アセンダー」に820、「ディセンダー」に-180(マイナスがつきます)と入力します。

「メトリクス」画面

emスクエア(の高さ)=アセンダー+ディセンダー

「エンコーディング」の設定
「最大グリフ」項目の数値は256でOKです。「エンコーディング」は「MacOSRoman」に、「グリフ名」は「PDF互換のグリフ名を適用」を選択。「OpenTypeレイアウト」は「OpenTypeレイアウトコードを生成しない」をチェックします。

「クレジット」の設定
「フォントベンダー」には販売社名を入れます。ここでは「販売社」、というか、オリジナルフォントをデザインしたあなたが名乗りたいブランド名ととらえておいていただいてOKです。「ベンダー URL」はオリジナルフォント配布Webサイト(もしあれば)などを入力します。「デザイナー」にはデザイナー名、「デザイナー URL」にはデザイナーのURLを入れましょう。「バージョン」は1.0から始めれば良いと思います。
そこまで入力すれば、「バージョン記録」「著作権」「商標」「説明」は自動的に作成されます。

「クレジット」画面。「daisy」はこんな感じで入力しました。

「ライセンシング」の設定
「ライセンシング」にはエンドユーザーとのライセンスに関する契約についての記述をします。配布等により、エンドユーザーが発生する場合は記述した方が良いですが、そうでなければ空欄のままで大丈夫です。
エンドユーザーが発生する場合でも「ライセンスTEXT」の欄に書ききれない文章量になることがあります。その場合そこは空欄にし、代わりに「ライセンスURL」にURLを入力し、エンドユーザーライセンス契約のこと(あるいはそれに該当するAGREEMENTなどのこと)が書かれたページに誘導するというのも手段です。
そして「OpenType埋め込み許可」の「埋め込み」は、「表示と印刷(文書の表示または印刷のみ許可)」を選び、「埋め込みサブセットを許可」をチェックします。

「レコメンデーション」の設定
デフォルトのままでOKです。

さあこれで「フォント情報」の設定は完了です。ここまでできたらいったん保存(コマンドS)しましょう。そうすると、拡張子「.fog」のデータが保存されるはずです。

 

[6]Fontographerのドキュメントに「元AI用紙」のAIデータをペースト、濃淡を100%にする

Fontographerのドキュメントのマス目がありますね。A、B、C、D・・・と1文字ずつ並んでいます。ここにAdobeIllustratorで作成したAIデータをペーストしていきます。

こんな感じでマス目にペーストしていきます。

「Fontographer」のドキュメント

全部の文字をペーストできたら、文字の塗りつぶしの濃淡を100%にします。
「濃淡を100%に」何ソレ? そうなりますよね。ちょっと説明します。AIデータをFontographerのドキュメントにペーストした時点では、文字は透明な状態となっています(マス目をクリックすると1文字ごと別ウィンドウで開くことができ、状態が確認できます)。なのでフォントデータとして実態を持たせるため塗りつぶしが必要となります。
では濃淡を100%にする方法です。濃淡を100%にしたい文字をドキュメント上で選択し(ペーストした文字全て選択する)、メニューバーから「エレメント」→「選択情報」を選びます。「塗りつぶしとストローク」の左横の三角をクリックして開くと、「グラフィックス」の項目があります。「塗りつぶし」にチェックをし「濃淡」を100%にします。これで、各文字が、濃淡100%となり、見た目にBlack100%の状態になります。

「選択情報」で「濃淡」を100%にします

「選択情報」画面。バーには「グリフ情報」と表示されます。

これを

透明なままのグリフ

こうじゃ!

濃淡が100%となったグリフ

ここまでできましたか? あとはemスクエアの印を消すなどの行程を経て、データを書き出しフィニッシュです。詳細は、また次回。

 

まとめ

・emスクエア(の高さ)=アセンダー+ディセンダー
・Fontographer を立ち上げたら、「エレメント」→「フォント情報」で必要事項を入力する。
・Fontographer のドキュメントにペーストしたデータは透明なので、濃淡を100%にする必要がある。

ではまた!

 

こんにちは。ANGEL VIBESです。今日もFontographerを使ったオリジナルフォントの作り方お話です。前回は、フォントの図案を決めて下描き用紙に下書きし、下絵を完成させるところまで進みましたね。今日は、その下絵をAdobeIllustratorでトレースし、Fontographerに読み込ませるためのAIデータを作成するところまで解説します。

 

[2]スキャナーで下絵をスキャンし一文字ずつ切り分ける

下絵が完成したら、スキャナーでスキャンしAdobePhotoshopで開いて一文字ずつ切り分けます。切り分けた文字の下絵はpsdで保存します。「PSD下絵」などの名前のフォルダを作り、その中に保存していくと良いでしょう。
切り分け方ですが、下絵全体の中から1文字ずつ選択してコピー(コマンドC)し、新規ドキュメント(コマンドN)にペースト(コマンドV)。これをPSD形式で保存していきます。これで、1文字ずつ切り分けることができます。

下絵をスキャンしてPhotoshopで開き

1文字ずつ選択し、新規ドキュメントにコピー&ペースト。
Aから始めて、こんなかんじのPSDデータをフォルダに保存していきます。

全部の文字を保存し終えたなら、トレースの準備は整いました。

 

[3]AI形式のトレース用紙を使いAdobeIllustratorで1文字ずつトレースする

「トレース用紙」何ソレ? そうですね。そのようなモノはどこにも売ってません。これもANGEL VIBESオリジナルのAIデータがあるので、初めてフォントをデザインする方は、使っていただいてかまいません。→無料ダウンロードはこちら☆
「トレース用紙」は前回のお話で出てきた「下描き用紙」と内容は同じです。でも、「トレース用紙」は、ページ数(ドキュメントの数)が数メージあり、なおかつレイヤーに分けてあり、トレースがしやすい仕様になっています。「下描き用紙」をもとに下絵を作成したのなら、「トレース用紙」を利用していただくと作業がしやすいと思います。
※なお、私の自作の「トレース用紙」も、「俺が作ったトレース用紙だ」などとしてこの用紙のAIデータを売ったりするのでなければ、自由に使っていただいて結構です。どんどん使ってフォント作成にお役立てください。

では、AdobeIllustratorでAI形式のドキュメント、「トレース用紙」を開きます。まず、A、B、C、D・・・と順番に、[2]で作成した下絵のPSDデータを「下絵」レイヤーに配置していってみましょう。方眼の罫線に合わせて並べていきます。下絵の濃さは作業しやすい濃さに調節。下絵のPSDデータにも方眼の罫線があるので、おそらく作業しやすいと思います。
下絵を並べ終えたら、「Design」のレイヤーで下絵をトレースします。トレースしたAdobeIllustratorのドキュメントは、AI形式で保存します。

トレースし終えたら、少し落ち着いて全体を眺めてみましょう。
全体を見て、いかがですか? 気になる部分は微調整をしましょう。

これが

こうじゃ!

 

[4]トレースしたAIデータを「元AI用紙」に1文字ずつ保存します

「元AI用紙」何ソレ? そうですね。お察しのとおり、ANGEL VIBESオリジナルのAIデータがあります。これも使っちゃいましょうか!→無料ダウンロードはこちら☆
※なお、私の自作の「元AI用紙」も、「俺が作った元AI用紙だ」などとしてこの用紙のAIデータを売ったりするのでなければ、自由に使っていただいて結構です。どんどん使ってフォント作成にお役立てください。

[3]で作成したトレースデータを「元AI用紙」にペーストし、1文字ずつAI形式で保存します。「元AI」などの名前のフォルダを作り、この中に保存していけばいいと思います。なおペーストした文字は、ベースラインにそろえてくださいね。
「AIデータも1文字ずつ保存しなければならないの?」
そうですね。そんな疑問も出てくるかと思います。でも、これはFontographerに読み込ませるために必要なのです。「元AI用紙」のドキュメントの上下に印がついていることに気がつきましたか? 実はこれがFontographerに読み込ませるための、必須の印です。
ちょと説明しますね。Fontograperは画像を読み込む時、上下の高さを100%として読み込みます。なので、任意の高さ100%を示す印を全部の文字のドキュメントに記すことが必要です。印をつけずに文字だけを読み込ませると、文字それぞれの高さを100%として読み込み、出来上がるとバラバラの大きさになってしまいます。正直なところ、この辺はFontographerの面倒なところではあります。

こうやって、1文字ずつのデータを作り保存していきます。

 

全ての文字をそれぞれ保存し終えましたか? それではいよいよFontographerを使う段階です。次回はFontographerの使い方のお話です。

 

まとめ

手書きの下絵は、
1. スキャナーでスキャンし一文字ずつ切り分ける
2. AI形式のトレース用紙に下絵を配置し1文字ずつトレースする
3. トレースしたAIデータを「元AI用紙」に1文字ずつ保存

これでFontographerに読み込ませる準備は整いました。

ではまた!